大学院修士課程においては、心理学の多岐の分野におよぶ講義や、学内の附属心理・教育相談室ならびに学外諸機関での実習を通して、心理専門職として高度で専門的な業務に従事するための基礎となる知識と実践的な技能を身につけます。
修士課程におけるもう一つの目的は、研究者としての素地を養うことです。ものごとを論理的にとらえ、人の心理現象や行動の奥に隠されている仕組みを解明していくための、科学的な研究手法を身につけていきます。その成果を修士論文として提出することになります。
2年という限られた在学年限の中で、このような目的を達成するためには、計画的に時間を使っていく必要があります。早期に自分の研究テーマを明確にし、自主的に研究を進めていく態度が重要です。また、この間に自分の将来の進路について明らかにしていく必要があります。心理臨床の仕事に就くことを希望する人は、実習経験を通して自分の興味関心を明確にし、職業領域を選択する必要があるでしょう。また、研究者としての路を希望する人は博士後期課程への進学を考慮に入れた研究計画が修士課程の段階で必要になるでしょう。
さまざまな分野で心理専門職の職能が注目されています。心理専門職として初の国家資格を定めた「公認心理師法」は2017年9月15日に施行され、2018年度から正規の養成が始まります。このスタートとともに、本学でも学部と大学院の両課程で、新たなカリキュラムに基づく教育を始めています。公認心理師カリキュラムでは、幅広い心理学の素養を身につける学部教育に続く、大学院での実践的な臨床心理学教育が求められます。
また、「臨床心理士」は心の専門家として信頼を得てきた、更新制の資格です。本専攻は、臨床心理士養成の第1種指定校であり、理論と実践に関わる領域の諸分野の科目を配し、個人の能力を伸ばしてきました。
本学では、学部と大学院の一貫した教育に基づく、20数年にわたる臨床心理士養成の実績を生かし、両資格に対応できる切れ目のない教育をおこないます。
心理専門職には、心理学の幅広い理論に関する正確な知識にもとづいた、実践的で倫理的な応用が求められます。本専攻では、人間の精神活動の基礎を学び、心理査定、心理支援、精神病理学などで臨床心理学の本質を深く理解していきます。これらを把握し、医療、福祉、教育、司法、産業の各分野に関する幅広い基礎知識を備えて、地域社会でのさまざまな心理的問題を解決する能力を養います。
学内実習施設である心理・教育相談室では、地域の方々の心の問題に応じることを通して、臨床家としての基本的技能や倫理的態度を修練します。さらに学外実習では川崎医科大学附属病院、川崎医科大学総合医療センター、社会福祉法人旭川荘をはじめ、関係病院や福祉施設、教育・産業・司法機関で各領域の専門職の方々との協力の仕方を習得します。つまり、公認心理師及び臨床心理士に求められる多職種連携やチーム医療の知識や実践、臨床経験を広くより豊かなものにすることを目標にしています。