医療福祉学は、社会福祉学をはじめとする社会科学、自然科学、複合的な研究領域である生命倫理学など、その近接領域はきわめて広範囲にわたります。医療福祉基礎研究では、医療福祉の関連領域を学ぶことによって、専門職としての基礎となる「人間理解」を深めていくことを目的としています。また、本大学院生が修士論文を作成する際に必要とされる文章表現力、論理的思考、統計データの分析技術、そして学会等の報告で要求されるプレゼンテーション技術などを修得するためのカリキュラムが講義の中に盛り込まれているのが特徴です。
国民の医療福祉ニーズは高度化、多様化しています。医療福祉専門職(医療ソーシャルワーカー)においても、エビデンスに基づいたより高度に洗練された専門技術が求められています。医療福祉専門職の実際的事例や現場体験から援助方法に関する帰納的研究をすすめ、より困難な問題状況にも適切な介入、援助ができる高度な専門技術を習得することを目指します。
高齢化と少子化が進む中で、人々のウェルビーイングを損なうさまざまな生活問題が深刻になってきています。ソーシャルワーカーは、社会的な援助を必要とする人々のニーズを的確に捉え、適切な対人援助サービスを提供し、問題の解決を図ることが求められています。社会福祉研究では、高齢者・児童・障がい者の生活問題や、家庭・地域などの環境問題を解決するための理論と実践(方法)について実証的な研究を行います。また、これらの生活・環境問題を解決するために必要なジェネラリスト・ソーシャルワークの専門的技術を習得することを目的としています。
医療福祉政策研究は、単に医療と福祉の二つの分野を寄せ集めた領域とサービスを意味するのではなく、「一人の人間が、健康で安心して生活できること」を目的としたさまざまな仕組み(政策、制度、法令=社会保障制度)とそこから提供されるサービスの有様を追及する学問領域であり、また、それらの制度等を構想し、考察するときの視点をいいます。この観点に立ち、現在の社会保障政策・制度を総合的に概観し、主要な制度の仕組みと目的を理解するとともに、制度等の問題点とあるべき姿を明らかにします。
「環境」と「福祉」は21世紀における重要なキーワードです。ともに、人間社会・生活の根源に関わるものです。高度な福祉社会の実現のために、環境と福祉の接点に着目し、両者の密接な関係性を考察・研究する学問領域を環境福祉学と位置づけます。環境福祉研究では、環境および福祉の視点から、環境と福祉の相互関係、さらに環境と福祉の連携・統合について考察・研究します。
今日、我が国の発達障害に関わる環境は、発達障害者支援法の施行および障害者自立支援法の成立を契機として、大きく変わろうとしています。発達障害研究では、発達障がい児・者への支援はもとより家族への支援について、世界的に共通に評価されているTEACCHプログラムの理論と実践に基づいて研究・考察を行います。また、構造化のアイデアや具体的スキルを学びつつ、実際のケースに対する質の高い支援のあり方を検討していきます。
21世紀の医療は、ゲノム情報に基づく個別化医療の時代を迎え、生活習慣病の罹患リスクや手術後の合併症のリスク、治療薬の効果や安全性に関わるゲノム情報をもとにした個人に最適の医療が遠からず現実のものになろうとしています。遺伝カウンセリング研究では、遺伝性疾患の患者・家族またはその可能性のある人が直面するさまざまな意思決定場面における支援(医療的、心理的、社会的支援)の理論と実践について研究をすすめ、充実した実習・演習により遺伝カウンセリングの専門的技術の習得を目指します。
修士課程の上記研究分野について、①理論研究、②運営・システム研究および③実践研究の立場から研究を深めます。