遺伝医療には、多くの診療科と多職種によるチーム医療が要求されます。認定遺伝カウンセラーは、臨床遺伝専門医と協力して、常に患者・家族の立場を尊重し、専門情報の提供や心理学的介入などにより、患者・家族が遺伝学的検査や治療の選択を自律的に決定できるよう支援する専門職です。
本コースは、遺伝医療の現場で活躍できる認定遺伝カウンセラーの養成を第一義に遺伝カウンセリングの教育者・研究者としての視点の涵養を目的としています。
2005年度から保健看護学専攻で開設していましたが、2009年度から医療福祉学専攻で開設しています。
遺伝カウンセリングとは、本人もしくは家族の遺伝学的問題に関する相談に訪れた人(クライエントといいます)に対して、遺伝学的情報およびその関連情報を提供し、自律的な意思決定を支援する医療行為といえます。 公式には、米国人類遺伝学会の定義(1975年)が、広く支持されてきています。2006年、米国遺伝カウンセラー学会(National Society of Genetic Counselors)により、時代に即した新しい遺伝カウンセリングの定義が公表されました。
この定義には簡潔に要点が示されていますが、もう少し具体的に遺伝カウンセリングの流れをみてみましょう。 遺伝カウンセリングは大きく分けると三つのアプローチから構成されます。
遺伝カウンセラーは、初対面のクライエントが遺伝カウンセリングを通して、問題解決について自己決定できるようパートナーシップを築くことが重要です。そのためには、クライエントの関心事(悩みや心配、想い)を受け入れ、理解するよう努める態度が必要です。
クライエントの問題解決に必要な情報収集(病歴、家族歴など)
遺伝学的解析(家系図の作成、遺伝様式・再発率の推定、遺伝学的検査)
心理社会的アセスメント
該当する疾患について最新の遺伝医学情報・社会資源情報の収集
クライエントの理解を確認しながら分かりやすい説明
問題解決に向けた自律的意思決定の支援
心理社会的アセスメントに基づく支援
必要に応じた継続支援
このように、遺伝カウンセリングを行うには、遺伝医学の知識だけではなく、医療面接、生命倫理学、臨床心理学などの深い知識と技術・態度が必要であることが理解されると思います。
本コースは、2005年4月1日に発足した日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会による「認定遺伝カウンセラー制度」の遺伝カウンセラー認定養成課程として認定されています。 本コースでは遺伝カウンセリングの基礎となる人類遺伝学や遺伝医学に加えて、医療面接、生命倫理学、臨床心理学など知識の習得と、遺伝カウンセリングの実施に必要な技術・態度を身につけるための実習に重点を置いて指導します。 本コースの修了者は、「認定遺伝カウンセラー制度」による認定試験の受験資格が得られ、合格すると認定遺伝カウンセラーを呼称することができます。
全国で最初の医療福祉大学である本学の特性を活かし、医療福祉の視点からも遺伝カウンセリングを学ぶことができる充実したカリキュラムです。 本学の関連施設である川崎医科大学附属病院遺伝外来や倉敷中央病院と神奈川県立こども医療センターの遺伝診療部など複数の遺伝カウンセリング実施施設で、遺伝医療の経験豊富な臨床遺伝専門医・指導医や認定遺伝カウンセラーである教員が直接指導します。
下記の科目表により、必修科目32単位ならびに選択科目6単位以上を修得すること。
授業科目 | 単位数 | 履修の方法 |
---|---|---|
医療福祉学特論Ⅰ | 2 | 必修38単位 |
遺伝医療と生命倫理学特論 | 2 | |
臨床心理学特論 | 2 | |
人類遺伝学特論Ⅰ | 2 | |
人類遺伝学特論Ⅱ | 2 | |
遺伝医学特論Ⅰ | 2 | |
遺伝医学特論Ⅱ | 2 | |
遺伝カウンセリング・臨床遺伝学特論 | 2 | |
人類遺伝学演習 | 2 | |
遺伝カウンセリング演習Ⅰ | 2 | |
遺伝カウンセリング演習Ⅱ | 2 | |
臨床遺伝学・遺伝情報学演習 | 2 | |
遺伝カウンセリング学研究Ⅰ | 2 | |
遺伝カウンセリング学研究Ⅱ | 2 | |
遺伝カウンセリング実習Ⅰ | 2 | |
遺伝カウンセリング実習ⅡA | 2 | |
遺伝カウンセリング実習ⅡB | 2 | |
医療福祉学特別研究Ⅰ | 2 | |
医療福祉学特別研究Ⅱ | 2 | |
社会福祉調査特論Ⅰ | 2 | 選択6単位以上 |
社会福祉調査特論Ⅱ | 2 | |
人間行動学特論Ⅰ | 2 | |
医療福祉の生命倫理学特論Ⅰ | 2 | |
医療福祉の生命倫理学特論Ⅱ | 2 | |
医療福祉学基礎演習Ⅰ | 2 | |
医療福祉学基礎演習Ⅱ | 2 | |
質的研究方法論Ⅰ | 2 | |
質的研究方法論Ⅱ | 2 | |
障害者医療福祉学特論Ⅰ | 2 | |
医療ソーシャルワーク特論Ⅰ | 2 | |
社会政策・社会保障特論Ⅰ | 2 | |
医療福祉制度特論Ⅰ | 2 | |
公衆衛生学特論Ⅰ | 2 | |
公衆衛生学特論Ⅱ | 2 | |
地域保健福祉学特論Ⅰ | 2 | |
地域保健福祉学特論Ⅱ | 2 | |
医学特論 | 2 |
配当年次 | 履修科目 | |||
---|---|---|---|---|
医療福祉基礎研究 | 遺伝カウンセリング研究 | |||
1
年 次 |
春学期 | 医療福祉学特論Ⅰ
医療福祉学基礎演習Ⅰ 医療福祉の生命倫理学特論Ⅰ 選択科目 |
人類遺伝学特論Ⅰ
人類遺伝学演習 遺伝カウンセリング・臨床遺伝学特論 遺伝カウンセリング演習Ⅰ 遺伝医学特論Ⅰ 医学特論 |
|
秋学期 | 人類遺伝学特論Ⅱ
臨床心理学特論 臨床遺伝学・遺伝情報学演習 遺伝カウンセリング学研究Ⅰ |
遺伝カウンセリング
実習Ⅰ・ⅡA・ⅡB |
||
2
年 次 |
春学期 | 医療福祉学特別研究Ⅰ
選択科目 |
遺伝医療と生命倫理学特論
遺伝カウンセリング学研究Ⅱ |
|
秋学期 | 医療福祉学特別研究Ⅱ | 遺伝医学特論Ⅱ
遺伝カウンセリング演習Ⅱ |
担当教員 | 職名 | 担当科目 |
---|---|---|
黒木良和 | 客員教授 | 基礎人類遺伝学、臨床遺伝学、遺伝カウンセリング |
山内泰子 | 教授 | 遺伝カウンセリング、基礎人類遺伝学、遺伝医療と生命倫理 |
升野光雄 | 教授 | 基礎人類遺伝学、臨床遺伝学、遺伝カウンセリング |
武井祐子 | 教授 | 臨床心理学、医療カウンセリング概論 |
青木清 | 客員教授 | 遺伝医療と生命倫理 |
大友孝信 | 非常勤講師 | 基礎人類遺伝学 |
黒澤健司 | 非常勤講師 | 遺伝サービス情報学、臨床遺伝学、遺伝カウンセリング |
二宮伸介 | 非常勤講師 | 基礎人類遺伝学、臨床遺伝学、遺伝カウンセリング |
田村和朗 | 非常勤講師 | 家族性腫瘍 |
後藤雄一 | 非常勤講師 | 神経筋疾患 |
佐村修 | 非常勤講師 | 周産期領域 |
山村佳世乃 | 非常勤講師 | 遺伝カウンセリング学研究 |
担当教員 | 職名 | 担当科目 |
---|---|---|
升野 光雄 | 教授 | 臨床遺伝学、分子細胞遺伝学、遺伝カウンセリング |
担当教員 | 職名 | 担当科目 |
---|---|---|
山内 泰子 | 教授 | 遺伝カウンセリング、分子遺伝学、生命倫理 |
医療福祉学専攻修士課程1期(9月)・2期(2月)の定員10名の若干名を本コースの募集人員とします。 専門職養成を目的とし、実習を重視したカリキュラムのため、常勤就業しながら2年間で本コースを修了することは困難と思われます。
原則として大学の卒業学部は問いません。本大学院修士課程学生募集要項の出願資格を満たせば、医療専門職資格がない方の出願も可能です。ただし、以下の科目について大学レベルの教育を受け、単位修得していることが望まれます:人間科学系科目(心理学または人間発達理論に関する科目)、自然科学系科目(生物学または遺伝学)、医療系科目(医療概論または公衆衛生学など医療システム・予防医学・疫学に関連した科目)。
大学附属病院、総合病院、小児病院などにおける遺伝医療の現場で認定遺伝カウンセラーとして活躍が期待されています。また、認定遺伝カウンセラー養成教育機関で教職や研究にも従事できる可能性があります。さらに、公立・民間の研究機関での遺伝子解析研究にも関わる機会が出てくるでしょう。近い将来、公衆衛生領域や健康産業、バイオ企業にも活躍の場が広がることが期待されます。
大学附属病院、総合病院、小児病院などにおける遺伝医療の現場で認定遺伝カウンセラーとして活躍が期待されています。また、認定遺伝カウンセラー養成教育機関で教職や研究にも従事できる可能性があります。さらに、公立・民間の研究機関での遺伝子解析研究にも関わる機会が出てくるでしょう。近い将来、公衆衛生領域や健康産業、バイオ企業にも活躍の場が広がることが期待されます。
本学教員を中心にして、遺伝医療に携わる専門家の執筆による「連載 遺伝カウンセリング」を小児看護2009年6月号から15回にわたり掲載しました。ぜひ、ご一読ください。