私が大学に入学したころ,自分は何者で,これからどうなりたいのかという漠然とした疑問がありました。地に足がつかない感覚に,“これは自分だけなのか?”“どうしたらいいんだ?”と,とても怖かったことを覚えています。
そんなある日,大学の授業で,「アイデンティティ」という言葉に出会いました。「アイデンティティ」とは,Erikson(1950)によって提唱された,青年期の発達過程の様相を表す概念です。青年期に入ると,人は,自分は何者なのかという問いを自分に向け,答えを見つけようと,もがきます。私はこの「アイデンティティ」という言葉を知って,“これは私だけじゃないんだ”と,拍子抜けするような,ホッとするような気持ちを覚えました。そして,漠然としたものの正体が分かったからか,安心してその疑問に向き合えるようにもなりました。
心理学は心の中で起こっていること,つまり,目に見えないものに,取っ手をつけてくれる学問だと思います。取っ手がついたからといって,心の悩みが解決するわけではありませんが,悩みと向き合えるようになり,さらには人に伝えることもできるようになります。
そんなわけで,日常の中で感じる何気ない悩み,不思議だなと思うこと,人間に関するありとあらゆること,その全てに寄り添ってくれる心理学は本当にありがたい学問なわけです。
ここまで述べておいてズッコケますが,私は「アイデンティティ」の研究をしたことはありません。この4月に入学した1年次生を見ていると,これからどんな心理学ワードに出会うのだろうかと,勝手にワクワクしてこのテーマを取り上げた次第です。


















