カテゴリー: 教職員コラム

私の好きな映画~レオン~  武井祐子

 私は以前から海外ドラマが大好きだとよく話しています。日常のストレス解消というだけでなく、私にとって、ヨガとズンバ、そして海外ドラマを観ることは、生きていくうえでのビタミン剤のようなものです。私なりに好きなジャンルや作品の傾向があります。そして、その延長線上にあるような感覚で惹かれている映画が、『レオン』です。

 『レオン』で何より心をつかまれるのが、ジャン・レノ演じるレオンと、ナタリー・ポートマン演じるマチルダのやりとりです。この2人のやりとりが、本当に何ともいえないのです。お互いがお互いを思う気持ち、少しずつ形を変えながら、2人の間に生まれて、その関係性に強く引きつけられます。

 初めてこの映画を観たときの私は、ストーリーに、なんともいえない切なさが残りました。「どうして……」というような、簡単には割り切れない思い。その思いを抱えたまま迎えるラストが、なんともいえない余韻を残してくれます。人と人との絆やつながりって、いったい何なんだろう。誰かと出会い、その人を大切に思うことには、どんな意味があるのだろう。そして、いろいろなものを抱えながら、それでも「生きていく」ということは、どういうことなんだろう。『レオン』は、そんなことを考えさせてくれる映画です。

武井 祐子

私の好きな映画~平成狸合戦ぽんぽこ~  瀧川真也

 ジブリ映画で何が好きかと聞かれ,『平成狸合戦ぽんぽこ』と答えると,本当に好きなのに,いつも冗談だと思われます。悔しいので,今回はこの作品の魅力を少し心理学的に考えてみたいと思います。

 この映画は,狸たちが化けて騒ぐコミカルな作品に見えますが,それだけではありません。物語では,宅地開発によって住処が失われていくなか,狸たちは人間に抵抗するため,忘れかけていた「化ける」力を取り戻そうとします。

 狸たちの「化ける」は,私たちの日常にも重なります。私たちは,学校,家庭,友人関係など,場面に応じて振る舞いを変え,時には本音を隠して周囲に合わせることがあります。こうした振る舞いは,社会で生きるための「適応」ともいえます。

 物語の狸たちも,それぞれの方法で新しい環境に適応していきます。人間に化けて暮らすものもいれば,狸の姿のまま,わずかに残された自然の中で生き続けるものもいます。どちらの生き方にも,「自分は何者として生きるのか」という「アイデンティティ」の問題が表れています。適応は生きるために必要ですが,適応するほど,本来の自分から遠ざかってしまうこともあるかもしれません。

 理想と現実の狭間で何を諦め,何を守るのか。どこまで自分を変え,何を自分らしさとして持ち続けるのか。『ぽんぽこ』は私たちの生き方についても考えさせてくれます。

瀧川 真也

私の好きな映画~I am Sam アイ・アム・サム~ 髙尾堅司

 前職の頃,出張から戻る際の機内のモニターでこの映画を鑑賞して以来,魅了され続けています。

 「7歳の知能」をもつサムは,カフェで働きながら一人娘ルーシーと幸せな日々を過ごしていました。ところがある日,「サムは父親としての能力に欠ける」とのある専門職者の判断により,2人は引き離されてしまいます。その後,サムはときに空回りしながらも有能な弁護士リタの活躍もあり,裁判所から条件付きでの親権を認めてもらうことができました。

 ところが,サムはその後に行われた大切な審査会を無断で欠席してしまいます。ここまでの過程は,サムにとって決して楽な展開ではなかったのです。

 サムの自宅を訪れたリタは,すっかり意気消沈するサムを見つけました。そんなサムに対してリタは「私はまだまだ闘えるよ」「もっと闘おうよ」といった言葉で叱咤激励します。それに対してサムは,「闘ったよ・・・」「一生懸命に・・・」と力なくつぶやきます。そんなサムに対して「もっと闘おう!」と激励するリタに対してサムは,「君は生まれつき優秀で僕はこうなんだ。だから君には心に受けた傷の痛みが分からない!」といった厳しい言葉を投げかけてしまいます。

 そんなサムに対してリタは,「自分だけが悲しんでいるとでも思っているの?」,「私は家族とまったくうまくいかない!」「そんな日々にしょっちゅう挫折感を味わっている・・・」「みんな立派に見える・・・」「私だけがダメなんだ・・・」といったメッセージを強い口調で発し,泣きじゃくってしまいました。これまで弱みを見せなかったリタのそんな一面に,サムは温かなまなざしで「リタは立派だよ」とやさしく声を掛けます。

 このシーンは,人と比較して自分にないものに目を向けがちな人間の一側面を描き出しています。そして何より,たとえ障がいがあろうとも,ときに互いの考えがぶつかり合うことがあろうとも理解し合える可能性を鮮やかに描写しているように思います。このシーン以外にも,考えさせられる場面が多々あります。私も,この機に再度鑑賞してみようと思います。

髙尾 堅司

私の好きな映画〜風の谷のナウシカ〜 進藤貴子

 そのもの青き衣(ころも)をまといて金色(こんじき)の野(の)に降り立つべし。おおおお〜!
 と、おばば様が涙にむせびながら、戦さに怯え身を寄せ合う村人たちと共に見つめているその人は誰か。この映画の最後にわかります。

 この映画の世界は、火の七日間戦争で焼き尽くされ汚染されて、巨大化した昆虫が跋扈する腐海という森に飲み込まれようとしています。風の谷の王の遺児ナウシカ姫はメーヴェを駆り、蟲(むし)や毒をもつ植物と共存するすべを探っています。
 ナウシカが見出したのは、地上では腐海の植物が強い毒を放出し、その間に地中が少しずつ浄化されていること。ナウシカはそれを地下の実験室で一人で見出し、人が傷つけた大地の傷の大きさを思い、静かに涙していました。

 この映画の序盤、親を殺されたキツネリスに手を出し、ガシッと噛みつかれるシーンは有名なので、ご存知の人もあるかもしれません。「うっ・・! 怖くない、ほら、怖くない。・・・(ぺろぺろぺろ)あははははは。ユパ様、この子、私にくださいな」「・・不思議な力だ」。
 毒を吐き、攻撃する姿のずっと奥に、浄化や信頼の力が閉じ込められている。共に傷つく人だけが、それらを引き出すことができる。Jung,C.G(ユング)が心理療法における「傷ついた治療者/傷ついた癒し手 Wounded Healer」と名付けたものに、ナウシカは近いように思います。

 ところで、風の谷のナウシカのオープニングは、ひょう〜と砂ぼこりが舞う荒廃した大地を旅して回る剣士ユパ様の姿でした。宮崎アニメのオープニングには、旅や引っ越しといった「移動」のシーンが多く、未知の世界や冒険(イニシエーション)にいざなわれます。

 さて、次の旅するオープニングは、どの宮崎アニメでしょう。私のいい加減な記憶のせいであらぬ脚色が入っていましたらすみません。

 1. 人生で初めてもらう花束がお別れの花束なんて。ガタガタガタ(車に乗っています)。
 2. 今夜の天気予報を聞いて旅立ちを決める主人公。
 3. 引っ越し道具を山ほど積んだトラックが田んぼの中を走っていく。
 4. 30秒で仕度しな!

 

 

こたえ)
 1. 千と千尋の神隠し   2. 魔女の宅急便   3. となりのトトロ
 4. 天空の城ラピュタ(オープニングとしてははしょり過ぎました)

私の好きな映画 〜白い巨塔〜 佐々木新

 映画館で映画を観る習慣がないため,ここではテレビドラマまで枠を広げてみます。思い返すと,社会の仕組みや権力構造,人間の欲や駆け引きが迫ってくる物語には妙に惹かれることがありました。この作品は私にとってその代表格です。大学病院での権力闘争,主人公の果てしなき野望と医療倫理を描く重厚なドラマでした。登場人物が交わす言葉ひとつひとつに組織の力学や人の思惑が丁寧に織り込まれていて,社会の仕組みを映す鏡のようでもありました。

 放送当時,私は社会人2年目。幸いにも生き馬の目を抜くような世界とは無縁の職場でしたが,どこか自身の興味や心情と重なる部分があったのでしょう,録画しては何度も見返していました。すると台詞もいくつか自然と覚えてしまい,職場の先輩と覚えた台詞で冗談を言い合うこともありました。当時覚えた台詞はいまでも社交の場でときに役立つことがあり,テレビドラマの視聴が私の社会的スキルに影響を及ぼしたことを感じます。自分の中に,Bandura, Aのいう観察学習の成立をみる思いです。

佐々木 新

私の好きな映画 〜グッド・ウィル・ハンティング / 旅立ち〜 今里有紀子

天才的な頭脳を持ちながら、過去のトラウマから心を閉ざして、周囲を威嚇・冷笑し防衛機制(自分の心を守る盾)を張り巡らせて生きる青年ウィルが、最愛の妻を亡くして傷ついた(喪失体験)心理学者ショーンと出会い、激しくぶつかり合いながら少しずつ心を開いていく不朽の名作です。
この映画、臨床心理学の視点から眺めると面白さが何倍にも跳ね上がります!!

当初、ウィルは、自身の心の傷み(「愛されない恐怖」)から外の世界を迫害的にとらえ、防衛(知性化,価値下げetc)を張り巡らしていました.そして、ショーンにも激しくテストをします。

 ここで、注目したいのが、ショーンが見せる「逆転移」の扱いです。ウィルの痛烈な言葉に、ショーンは動揺します(激昂すらします)が、そこから、ウィルの真の「傷み」(投影同一視)に触れ(体験し)ます。つい、そこで(映画では)、ショーンは自身の傷み(自己開示)を伝えてしまうのですが・・・。二人の生身の「傷み(トラウマ)」に触れながらも、ウィルの「傷み」を包容(「コンテイン」)しながら防衛を一枚ずつはがしていきます。

「It’s not your fault(君は悪くない)」が臨床心理学の本質を凝縮しています。「信頼関係(ラポール)」形成の要素の「受容」(人間理解の深さ)がいかに泥臭いものか、リアルを感じられるのではないでしょうか。生きた「臨床」へと昇華する瞬間をぜひ、目撃してみてください。

今里 有紀子

私の好きな映画 〜インサイド・ヘッド〜 荒井佐和子

私の好きな映画は、ディズニー/ピクサー作品『インサイド・ヘッド』です。この映画は、感情を擬人化し、私たちの記憶や心の動きを、面白く、そしてとても分かりやすく描いています。

登場する感情は「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」の五つ。最初は「ヨロコビ」だけで毎日をうまく進めようとしますが、物語が進むにつれて、「実はどの感情も大切な役割を持っている」ということに気づかされます。つらい気持ちや不安な気持ちも、私たちを守ったり、立ち止まって考えるきっかけをくれたりするのです。

この映画は「見る認知行動療法」と言われることもあり、毎年学生のみなさんと一緒に観ながら、私自身も新たな気づきをもらい、心の大切な動きを思い出させてくれる、大好きな作品です。

ちなみに続編が2024年に公開されているのですが、実は未鑑賞……。そろそろ私の感情の指揮官を起こさないといけません。

荒井 佐和子

教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ ~泣くから悲しい?悲しいから泣く?~ 本城 瑞江

 心理学で人の感情を勉強するとき,必ずこの問いを学びます。
 感情には主観的要素・生理的要素・行動的要素があり,これらを総合して感情生起のメカニズムが説明されたりします。そして,その起源を辿っていった先にたどり着くのが「泣くから悲しい?悲しいから泣く?」というキャッチーなフレーズです。
どちらもありますよね。涙が出て「あー,私悲しかったのかぁ」と気がついたり,逆に悲しい気持ちになってから涙がぶわーっとあふれてきたり。

 前者は,出来事に対して身体(抹消神経)が反応して,それが脳に伝わって感情が湧き起きるので抹消起源説と言われています。提唱者の名前を取ってジェームズ―ランゲ説とも言います。
後者は,脳(中枢神経)で感情が沸き起こり,身体部位に影響を与えるので中枢起源説と言われています。こちらも提唱者の名前を取ってキャノン―バード説とも言います。

 これは,どちらの説が正しいとか間違っているとか,そういう話がしたいのではありません。私がこの単語を選んだのは,心理学は人に起こる様々な現象に純粋に興味を持ち,何が起こっているのかを科学的に探求していく学問であることをお示ししたかったからです。
ちなみに,この2つの説と合わせて「2要因説」と言うのも学ぶのですが,これはまた別の機会に☆

 皆さんの身近にある疑問について知りたくなったら,ぜひ心理学を学びに来たください。
一緒に探求していきましょう~!

本城 瑞江

教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ~アイデンティティ~ 湯淺 絢

 私が大学に入学したころ,自分は何者で,これからどうなりたいのかという漠然とした疑問がありました。地に足がつかない感覚に,“これは自分だけなのか?”“どうしたらいいんだ?”と,とても怖かったことを覚えています。

 そんなある日,大学の授業で,「アイデンティティ」という言葉に出会いました。「アイデンティティ」とは,Erikson(1950)によって提唱された,青年期の発達過程の様相を表す概念です。青年期に入ると,人は,自分は何者なのかという問いを自分に向け,答えを見つけようと,もがきます。私はこの「アイデンティティ」という言葉を知って,“これは私だけじゃないんだ”と,拍子抜けするような,ホッとするような気持ちを覚えました。そして,漠然としたものの正体が分かったからか,安心してその疑問に向き合えるようにもなりました。

 心理学は心の中で起こっていること,つまり,目に見えないものに,取っ手をつけてくれる学問だと思います。取っ手がついたからといって,心の悩みが解決するわけではありませんが,悩みと向き合えるようになり,さらには人に伝えることもできるようになります。

 そんなわけで,日常の中で感じる何気ない悩み,不思議だなと思うこと,人間に関するありとあらゆること,その全てに寄り添ってくれる心理学は本当にありがたい学問なわけです。

 ここまで述べておいてズッコケますが,私は「アイデンティティ」の研究をしたことはありません。この4月に入学した1年次生を見ていると,これからどんな心理学ワードに出会うのだろうかと,勝手にワクワクしてこのテーマを取り上げた次第です。

湯淺 絢

教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ~分散学習~ 山根 嵩史

 私の専門である教育心理学では,教育・学習に関係する様々な要因について研究が行われています。研究対象は学習者や指導者,学習方法,学習環境など多岐にわたりますが,例えば「効果的な勉強法とはどんなものか」,「勉強ができる人になるにはどうすればよいか」といった問いに答えるのも教育心理学の役割です。なんだか,いかにも役に立ちそうですよね。
 そんな教育心理学の知見の1つをご紹介します。以下の2つの勉強方法のうち,より効果がある(成績が伸びる)のはどちらだと思いますか?

正解は…Aです。同じ時間や回数勉強をする場合,まとめて勉強するよりも適度に間隔を空けて勉強した方が,記憶に残りやすいと言われています。これは分散学習,あるいは学習の分散効果と呼ばれ,単純な身体動作の習得から,単語の記憶のような学校での勉強に近い状況まで,幅広く効果が確認されています。

 この分散学習について,もう一つ面白いことが分かっています。それは,「学習者は分散学習が効果的であることにあまり気づいていない」ということです。それどころか,「集中学習の方が効果的だと思っている」というデータもあります(Zechmeister & Shaughnessy, 1980)。教育場面に限らず,自分の考えや思い込みが実態とズレている,ということは多々あります。このようなズレを発見し,その仕組みを解明することが,心理学の面白さなのではないかと思っています。

山根 嵩史

引用文献:Zechmeister, E. B., & Shaughnessy, J. J. (1980). When you know that you know and when you think that you know but you don’t. Bulletin of the Psychonomic Society, 15(1), 41-44.