教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ ~ 協力行動を引き出す手がかり ~ 高尾 堅司

 私が学部生だった頃,非常に印象的な論文注)との出会いがありました。その論文は,水不足(渇水)に見舞われたある地域住民の節水行動を分析したものでした。いずれの分析結果も興味深いものでしたが,特に目を惹いたのは「渇水事態の深刻さの状況によって節水に協力する住民層が異なっていたこと」でした。

 たとえば,最初に節水を実行するのは,節水による労力をいとわない(利便性を度外視する)住民でした。その後,渇水事態が深刻化し,自主的な節水が勧告された状況において節水を実行するのは,節水による経済的効果を重視する住民でした。そして,いよいよ断水が実施される段階になったら,風呂や洗濯面で清潔さの水準を少し下げても良いと考える住民がようやく節水しようとするというのです。

 渇水事態の段階ごとに節水行動に着手する住民層が異なるということは,一律に節水に関する啓発メッセージを伝えるだけで十分とは言い難いことを示唆しています。そして,その背景には節水しようという動機に影響を及ぼす何らかの心理的要因が存在するはずです。節水行動に影響を及ぼす心理的要因を特定することで,限られた資源を有効に活用することができるかもしれません。

 人々が自分にとっての都合の良さを重視して行動するのではなく,全体にとって何が望ましいかを考えながら行動してもらうにはどうすれば良いか。これは,限られた資源の活用のみならず,社会的マナー一般に通ずる部分があります。身近なところから社会に至るまで,人々が気持ちよく過ごすための工夫を引き出すヒントが,心理学にはあります。

 

注)広瀬 幸雄・北田 隆 (1987). 渇水時における住民の節水行動の規定因 社会心理学研究,2(2),21-28.

 

高尾 堅司

教職員コラム 精神医学は役に立つ ―役に立つのが『医学』なのですー 澤原 光彦

 誠に理屈っぽくて申し訳ないのですが…。

そもそも病気やケガで苦しんでいる状態から健康を回復しようとすることが『医療』です。その医療を論理的・実証的に体系化したモノ(「学問として整備された」と表現できます)が『医学』です。

 

ですから『医学』は初めから終りまで、いわば終始一貫、徹頭徹尾「人の役に立つ」との姿勢に貫かれているのです。そうでなければ医学の名に値しないのです。

 

『精神医学』は、『精神領域』を主な対象として取り扱う医学の一領域と定義できますから、やはり最初から最後まで「人の役に立つ」ためにこそ存在しています。精神医学は精神領域の病気やケガや不調を改善し苦痛を和らげ、元気を取り戻すことに貢献することで成り立っているのです。

 

 従って「精神医学は役に立つ」とのテーゼ(命題)は私にとってはあまりにも自明な事なのです。

 なんだかわかりきった事を述べているみたいですが、ここで例えば「では、心理学は医学とは違うのか?違うとしたら、どこが違うのか?それとも同じと考えても良いのか?」などと疑問を抱いたとしたら、……おめでとうございます。生涯に渡って、考え続けられるテーマの一つが見つかったみたいですよ。

 さらに蛇足を一言:「役に立つ」ことが、「価値がある」と等しいのだろうか?という事も考え続けても良いはずではないか、と思います。

2025年10月1日 澤原光彦

2025/9/27 修論中間報告会

 修士課程1年次生(M1)の修士論文の中間報告会が開催されました。水子専攻主任のご挨拶に始まり,各自が進めている研究テーマとその内容に関するポスター発表が行われ,参加したM2や教員との活発な議論が展開されました。最後には谷原先生から発表についてのご講評がありました。

 

 研究を進めるためには日々の小さな努力の積み重ねがものを言いますが,努力の方向性を間違えてしまうとせっかくの積み上げも脆く崩れやすいものになってしまうかもしれません。そんな回り道も悪いものとは限りませんが,決められた期間の中で一定水準以上の成果を残すためには,少し先行く先輩やその道の専門家の視点とコメントが重要な道しるべとなるに違いありません。本日の活発な議論から今後取り組むべき課題に向けて大いに触発された方も多かったのではないでしょうか。

 

 研究に臨床実習になにかと追われて苦しい院生生活になりがちですが,それもまた院生室の仲間とともに楽しめる2年間であってほしいと教員としては思っています。M1の皆さん,あせらずに,だが休まずに,残りの1年半をしっかりと味わいましょう。

2025/09/17 秋学期ガイダンスが開催されました!

9月18日、秋学期のスタートに向けて、臨床心理学科の全学年合同ガイダンスが開催されました。

会場には久しぶりに顔を合わせた同級生との会話を楽しむ声が響き、和やかなムードに包まれていましたが、ガイダンスが始まると、学生の皆さんは一斉に真剣な表情に(さすがです!)。


各先生から、秋学期の授業に関するアナウンスをはじめ、就職活動や学生生活、資格・検定など、多岐にわたる重要な情報が共有されました。


熱心にメモを取り、これからの学びに向けた準備を進めている皆さんの様子は、とても頼もしく感じられました。今回のガイダンスで得た情報をしっかりと活用し、それぞれの目標に向かって実り多い秋学期を過ごしてほしいと願っています。

8月24日オープンキャンパス &「大学体験型」イベント開催!

 2025年8月24日(日),オープンキャンパス&「大学体験型」イベントが開催されました。猛暑の中、6・7月以上にたくさんの方々にご来場いただきました!

 臨床心理学科のオープンキャンパスは、総合受付前の教員紹介パネル、廊下の授業紹介ポスター(A0サイズ)に始まり、学生生活や資格・進路の展示室、心理テスト体験、箱庭療法体験、そして学科紹介とミニ講義、といった盛りだくさんのメニューがあります!

 今回、学科紹介は水子学先生(大学院専攻主任)が、ミニ講義は竹内いつ子先生(公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士のトリプルライセンス取得者!)が務めました。お聴きくださった高校生そして保護者のみなさんは、きっと、本学科の学びの奥深さと多様な進路を含むその魅力を存分に感じてくださったことと思います!!

 水子先生の学科紹介では、“まるでハリウッドが制作しているかのようなカッコいいスライド”(←ミニ講義担当竹内先生談)で、本学科での学びが専門職につながるだけでなく進路の選択肢を拡げてくれるものであることを、カリキュラム・取得できる資格・進路実績にもとづき説明されていました。「心理学の学びは役に立つ」というメッセージがみなさんに届いてくれることを期待します!

 竹内先生のミニ講義では,「自分会議」というテーマで,悩みの背景にある「こうあるべき自分」と「現実に体験する自分」の不一致を、カウンセリングでどのように一致に近づけていくかについてお話がありました。ご来場の方々は、興味深く聞いてくださっていました。臨床心理学科では、カウンセリングの実際について、さらに詳しく学べます。

 「大学体験型」イベントに参加されたみなさんも、たいへんお疲れさまでした。ぜひ秋の入試に生かしていただきたいです!

★「大学体験型」イベントの説明は、以下をご覧ください!
https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/experience/?TOP

 今回のオープンキャンパス&「大学体験型」イベントも,岡山県をはじめ,県外からもたくさんの方にお越しいただきました。いつもありがとうございます!
 高校生のみなさん、心理学・臨床心理学を学びたいと思ったら,ぜひ川崎医療福祉大学 臨床心理学科を訪ねてください。きっと、みなさんにとって“まだ、知らない世界”への明るい扉が開けます!

 次回のオープンキャンパスは 学園祭との併催による「キャンパスショーケース」で、10月18・19日(土・日)10:00~15:00の開催です(https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/opencampus/)。ご興味を持たれた方は、ぜひ足をお運びください。これまで同様、学生サポーターと教員スタッフがみなさんをお待ちしています。

教職員コラム 「心理学って役に立つんじゃ!~独り言は心の窓!?~」 岡野 維新

こんにちは。岡野です。
私は今,「独り言」の機能について研究をしています。

皆さんは普段,独り言を言いますか?
言うとしたら,どんな時ですか?

独り言って改めて考えてみると,一体何なんでしょうか…。

ロシアの心理学者・ヴィゴツキーさんによると,独り言は「自身の思考を補助することを目的とした発話」であるというのです(Vygotsky, 1962)。
 (※別名,「プライベート・スピーチ」!)

考え事をするとき,幼児さんはよく声に出しながら行っています。
小学生くらいになると声に出さなくとも,頭の中だけで行えるようになっていきます。

でも!
頭の中だけで処理しきれないような難題と対峙した時,何とか思考を整理しようと,あるいは何とか解決に至ろうとして,独り言(プライベート・スピーチ)がみられる場合があるようです。
それは子どもであっても,大人であっても関係なしだそうです。

数学の問題を解いているとき…。ゲームがなかなかクリアできないとき…。返事に困るラインが来たとき…。ロースカツにしようか,ヒレカツにしようか迷っているとき…。

そんな時,もし自分が独り言を言っていることに気づいたら,「あ,私,今,脳みそが即処理しきれないくらいの難題にぶち当たってるんだ」,「あ,私,この難題を乗り越えようと頑張ってるんだな」と思ってみてはいかがでしょう。

そんな時,あえて独り言のように思考を声に出してみてはどうでしょう。思考がまとまるかもしれません。

そんな時,もし身近な誰が独り言を言っているのを見かけたら,「あ,この人,今,脳みそが即処理しきれないくらいの難題にぶち当たってるんだ」,「あ,この人,この難題を乗り越えようと頑張ってるんだな」と思ってみてはいかがでしょう。

以上,独り言は心の窓かも,というお話でした。

(私はこの独り言の機能を活かして,気持ちのコントロールが苦手なお子さんの発達の手助けができたらと考えています。)

岡野 維新

【取材記事掲載】進藤先生の取材記事が公開されています(RSK山陽放送)

川崎医療福祉大学 医療福祉学部 臨床心理学科の学科長である,進藤 貴子 教授が取材を受けた以下の記事がオンラインで公開されています。

【タイトル & URL】
「日本人ファースト」→なぜ?日本人の心に響いたのか 社会で広がる様々な“〇〇ファースト“がメンタルに与える影響とは【心理学の専門家が解説】 | TBS NEWS DIG (4ページ) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2070251

Yahooニュースにも掲載されていたため,以下のリンクも併記いたします。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6547019

昨今の国際情勢や先日の参院議員選挙での動向などを読み解く上でも欠かせない,心理学的な視点をぜひご覧くださいませ。

 

教職員コラム 「心理学って役に立つんじゃ!~メンタライゼーション~」 今里 有紀子


あなたが、このイラストの老人に遭遇したとしたら、どのように思い、声をかけるでしょうか?

「どうしたのだろう?」「道に迷ったのかな?」「困っているのかなぁ?」「お手伝いできることあるかしら?」・・・。この時の心のプロセスはきっと「どうしたのかな?」と心で思い、そして、老人の困った不安そうな表情や、また、きょろきょろと道を探している行動から、「道に迷っているのかもしれないな」と判断します。そうだとすればきっと困っているだろうから、「何かお手伝いできないかな」と声をかけたくなり、老人の気持ち(心理状態)を読もうとされたのではないでしょうか。
 あなたが瞬時に行ったこの工程のことをメンタライジング(mentalizing)といいます。

 メンタライジングとは「自分と他者の行動の背後にある心理状態(=思考、感情、願望、意図、信念など)を推測、創造、解釈するプロセス」で、「心で心をとらえること(holding mind in mind)」(Fonagy)です。*1回1回の行為を「メンタライジング」、メンタライジングできることやその過程を「メンタライゼーション」と呼ぶ。

 このメンタライジングの能力の基盤は、養育者―乳児の相互交流の中で育まれるといわれています。メンタライジングが適切に育っていると、対人関係や社会的関係の理解を助けてくれ、また感情の調整や、自己の感覚や探索する力を育むといわれています。

 そしてメンタライジング能力は、心理療法でTh(セラピスト)―Cl(クライエント)関係の中でも促進また強化することができ、臨床でも応用されています。ぜひ、「こころでこころをとらえる」ことについて一緒に学んでみませんか。 

今里 有紀子

7月20日オープンキャンパス&大学体験型イベント開催!

 2025年7月20日(日)に,オープンキャンパス&大学体験型イベントが開催されました!
3連休の中日という中で,本当にたくさんの方々にご来場いただきました!

 澤原 光彦 先生の学科紹介では,本学での心理学の学び,取得可能な資格,多様な進路実現(企業就職・対人援助職・心理専門職など)をご紹介しました。特に,本学が「医療福祉」と名のついた最初の大学であること,本学科が「臨床心理」と名のつく最も歴史のある学科であることなど,本学・本学科の長い歴史についても,ご紹介しました。

 

 山根 嵩史 先生のミニ講義では,「勉強ができる人ってどんな人?〜教育心理学からの提言〜」をテーマに,効果的な勉強法についてお話がありました。来場者の皆様の多くは高校生ですので,皆様とても集中して聞いてくださいました。このように,心理学は明日から役立つような人間の心の仕組みを学ぶことができる,とても面白い学問です。

 

 体験コーナーでは,毎度人気のパーソナリティテスト・箱庭療法に加えて,今月からは職業志向テストが登場しました。来場者の皆様に楽しく心理学を体験していただき,サポーターも一緒に盛り上がりました。

 大学体験型イベントにご参加くださった皆様もありがとうございました。

大学体験型イベントってなに?と思われた方は,こちらをチェック!(https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/experience/?TOP)

 

 今回のオープンキャンパス&大学体験型イベントも,岡山県をはじめ,広島・鳥取・島根・香川・愛媛・徳島・高知など県外からもたくさんのご来場者様にお越しいただきました!いつもありがとうございます。心理学・臨床心理学を学びたいと思ったら,ぜひ!川崎医療福祉大学 臨床心理学科へお越しください!

 次回のオープンキャンパス&大学体験型イベントは 8月24日(日)です(https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/opencampus/)。

 

 

教職員コラム 「心理学って役に立つんじゃ!~不機嫌な人の見え方が変わる~」 荒井 佐和子

「あの人、不機嫌そう…」「私、何か悪いことしたかな?」
そんなふうに感じて、不安になったことはありませんか?
人は誰かの表情や態度を見たとき、その理由を「その人の性格」や「自分との関係」に結びつけて考えがちです。でも実際には、その人の置かれた状況や心の中の事情が影響していることも多くあります。

たとえば、大学の授業で、不機嫌そうな顔で途中入室した学生がいました。教室の空気が少しピリッとしましたが、後で話を聞くと「遅刻してしまって、申し訳なくて顔を上げられなかった」とのこと。ばつの悪さが表情に出ていただけでした。

また、教育相談で怒ったような口調の保護者の方がいました。「私に不満があるのかな…」と思いましたが、話すうちに、子育ての疲れや、誰にも頼れないという孤独感があることが見えてきました。強い口調の奥には、「ひとりで抱えきれない」という思いが隠れていたように思います。

心理学は、人の行動や表情の「背景」に目を向ける力を育ててくれます。
不機嫌そうな人に出会ったとき、「何かしたかな?」と考える前に、「何かあったのかな?」と少しだけ想像してみる。その一歩が、心の距離を縮めてくれるように思います。

興味を持った方は、社会心理学で扱う「人の行動の理由のとらえ方(帰属)」や、認知行動療法で学ぶ「考え方のクセ(認知のゆがみ)」について、本学科でぜひ学んでみてください。

 

荒井 佐和子