教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ ~「構造化」の半分はやさしさでできている?~ 佐々木 新

 少し前に,「ねこ転送装置」っていう不思議な現象が話題になったのを知っていますか?床にガムテープで丸を描くだけで,猫がその中にすっと入っていくんだそうです。うちには猫がいないので試せていませんが,ただの床に引き寄せられるなんて,なんだかかわいくて不思議ですよね。もし猫がいたら,きっと何度でもやってみたくなるやつです。

 でも,そのとき猫はどんな気持ちなんでしょう。安心しているのか,好奇心いっぱいなのか,それとも「また人間が変なことしとるな」とあきれながらも,目に見える輪っかには抗えずつい入ってしまうのか。諸説あるようですが,本当のところは猫にしかわからないですね。

 この話は,実は心理学にも通じるものがあります。たとえば,自閉スペクトラム症の人への支援には「構造化」という手法が使われることがあります。これは,時間や空間の使い方を目に見える形で整理して,理解や活動を助けるための工夫です。絵や写真を用いたスケジュールや手順書など,学校や福祉の現場でもよく使われていますし,臨床心理学でも大切なキーワードのひとつです。

 でも,視覚的な刺激にとても敏感な人の場合,それに強く引っ張られて,自分の意に沿わない行動が誘発されることもあります。つまり,よかれと思ってやった「構造化」が,知らないうちにその人にとっては「やらされている」ように感じられることもあるのです。構造化は,相手の思いや主体性を大切にする気持ち,すなわちあなたのやさしさで完成すると言えるでしょう。

 構造化に限らず,心理学の知識や技術を使うときには,「これって本当にその人のためになっているのかな」と立ち止まって考えることが大切です。「かわいい〜♡」って言いながら猫サークルを量産してしまうノリで人の心に関わると,ちょっと危ないかもしれませんね。

 心理学をしっかり学ぶということは,人の幸せについて考えることでもあります。心理学で相手の福利向上に資するのか,それとも悪魔に奉仕するのか──その違いは,使う人の人間性にかかっているのです。

佐々木 新

3年次就職懇談会 2025年11月8日(土)10:00-12:00

2025年11月8日(土)10時からお昼頃まで、3年次生を対象とした就職懇談会を開催しました。ご参加くださったご家族の皆様、ありがとうございました。

 まず、進藤学科長より、ご来学の御礼とともに、本学科3年生の学修状況について説明を行いました。次に、就職関連として、前年度の就職実績、就職活動のスケジュール、大学・学科のキャリアサポート等について説明を行いました。さらに、3年次で習得すべき単位の目安や学生生活についての説明がありました。

 ここ数年は、学生さんご自身の参加も増えており、将来への真剣な思いを受け取っています。ご家族とともに、学生の皆さんの希望進路のサポートができれば嬉しく思います。

2025/11/01 修士論文(M2)最終報告会

 2025年11月1日(土)9時からお昼過ぎまで、修士課程2年(M2)の修士論文最終報告会が開催されました。15名のM2生が一人ずつ3分程度で研究概要をプレゼンテーションしたあと、ポスター発表を行いました。

 主・副指導教員以外の先生方や同級生、下級生に自身の研究内容を説明し、コメントや助言を受けることができる貴重な機会であり、M2生は緊張しつつも、身振りを交えながら活発に議論していました。

 

 報告会の最後に、澤原先生よりご講評いただき、「2年間という限られた時間の中で、取り組むべき多くの課題を抱えながら、皆さんは本当によく頑張っている。提出までのあと1カ月間も大変だろうが論文の完成を目指して欲しい。」というあたたかなメッセージがM2生に送られました。

 予想していた結果が得られず、「自分の研究は失敗だったのだろうか」と不安になっている院生もいるかもしれません。でも、予想通りの結果が得られる方が珍しく、大半は意外な結果に直面するものです。それこそ科学の醍醐味であり、新たな発見の源泉になるのです。自身の研究で得られた知見を前向きに捉え、臨床心理学のフロンティアを切りひらく贈り物を未来に届けてください。

教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ ~ 協力行動を引き出す手がかり ~ 高尾 堅司

 私が学部生だった頃,非常に印象的な論文注)との出会いがありました。その論文は,水不足(渇水)に見舞われたある地域住民の節水行動を分析したものでした。いずれの分析結果も興味深いものでしたが,特に目を惹いたのは「渇水事態の深刻さの状況によって節水に協力する住民層が異なっていたこと」でした。

 たとえば,最初に節水を実行するのは,節水による労力をいとわない(利便性を度外視する)住民でした。その後,渇水事態が深刻化し,自主的な節水が勧告された状況において節水を実行するのは,節水による経済的効果を重視する住民でした。そして,いよいよ断水が実施される段階になったら,風呂や洗濯面で清潔さの水準を少し下げても良いと考える住民がようやく節水しようとするというのです。

 渇水事態の段階ごとに節水行動に着手する住民層が異なるということは,一律に節水に関する啓発メッセージを伝えるだけで十分とは言い難いことを示唆しています。そして,その背景には節水しようという動機に影響を及ぼす何らかの心理的要因が存在するはずです。節水行動に影響を及ぼす心理的要因を特定することで,限られた資源を有効に活用することができるかもしれません。

 人々が自分にとっての都合の良さを重視して行動するのではなく,全体にとって何が望ましいかを考えながら行動してもらうにはどうすれば良いか。これは,限られた資源の活用のみならず,社会的マナー一般に通ずる部分があります。身近なところから社会に至るまで,人々が気持ちよく過ごすための工夫を引き出すヒントが,心理学にはあります。

 

注)広瀬 幸雄・北田 隆 (1987). 渇水時における住民の節水行動の規定因 社会心理学研究,2(2),21-28.

 

高尾 堅司

教職員コラム 精神医学は役に立つ ―役に立つのが『医学』なのですー 澤原 光彦

 誠に理屈っぽくて申し訳ないのですが…。

そもそも病気やケガで苦しんでいる状態から健康を回復しようとすることが『医療』です。その医療を論理的・実証的に体系化したモノ(「学問として整備された」と表現できます)が『医学』です。

 

ですから『医学』は初めから終りまで、いわば終始一貫、徹頭徹尾「人の役に立つ」との姿勢に貫かれているのです。そうでなければ医学の名に値しないのです。

 

『精神医学』は、『精神領域』を主な対象として取り扱う医学の一領域と定義できますから、やはり最初から最後まで「人の役に立つ」ためにこそ存在しています。精神医学は精神領域の病気やケガや不調を改善し苦痛を和らげ、元気を取り戻すことに貢献することで成り立っているのです。

 

 従って「精神医学は役に立つ」とのテーゼ(命題)は私にとってはあまりにも自明な事なのです。

 なんだかわかりきった事を述べているみたいですが、ここで例えば「では、心理学は医学とは違うのか?違うとしたら、どこが違うのか?それとも同じと考えても良いのか?」などと疑問を抱いたとしたら、……おめでとうございます。生涯に渡って、考え続けられるテーマの一つが見つかったみたいですよ。

 さらに蛇足を一言:「役に立つ」ことが、「価値がある」と等しいのだろうか?という事も考え続けても良いはずではないか、と思います。

2025年10月1日 澤原光彦

2025/9/27 修論中間報告会

 修士課程1年次生(M1)の修士論文の中間報告会が開催されました。水子専攻主任のご挨拶に始まり,各自が進めている研究テーマとその内容に関するポスター発表が行われ,参加したM2や教員との活発な議論が展開されました。最後には谷原先生から発表についてのご講評がありました。

 

 研究を進めるためには日々の小さな努力の積み重ねがものを言いますが,努力の方向性を間違えてしまうとせっかくの積み上げも脆く崩れやすいものになってしまうかもしれません。そんな回り道も悪いものとは限りませんが,決められた期間の中で一定水準以上の成果を残すためには,少し先行く先輩やその道の専門家の視点とコメントが重要な道しるべとなるに違いありません。本日の活発な議論から今後取り組むべき課題に向けて大いに触発された方も多かったのではないでしょうか。

 

 研究に臨床実習になにかと追われて苦しい院生生活になりがちですが,それもまた院生室の仲間とともに楽しめる2年間であってほしいと教員としては思っています。M1の皆さん,あせらずに,だが休まずに,残りの1年半をしっかりと味わいましょう。

2025/09/17 秋学期ガイダンスが開催されました!

9月18日、秋学期のスタートに向けて、臨床心理学科の全学年合同ガイダンスが開催されました。

会場には久しぶりに顔を合わせた同級生との会話を楽しむ声が響き、和やかなムードに包まれていましたが、ガイダンスが始まると、学生の皆さんは一斉に真剣な表情に(さすがです!)。


各先生から、秋学期の授業に関するアナウンスをはじめ、就職活動や学生生活、資格・検定など、多岐にわたる重要な情報が共有されました。


熱心にメモを取り、これからの学びに向けた準備を進めている皆さんの様子は、とても頼もしく感じられました。今回のガイダンスで得た情報をしっかりと活用し、それぞれの目標に向かって実り多い秋学期を過ごしてほしいと願っています。

8月24日オープンキャンパス &「大学体験型」イベント開催!

 2025年8月24日(日),オープンキャンパス&「大学体験型」イベントが開催されました。猛暑の中、6・7月以上にたくさんの方々にご来場いただきました!

 臨床心理学科のオープンキャンパスは、総合受付前の教員紹介パネル、廊下の授業紹介ポスター(A0サイズ)に始まり、学生生活や資格・進路の展示室、心理テスト体験、箱庭療法体験、そして学科紹介とミニ講義、といった盛りだくさんのメニューがあります!

 今回、学科紹介は水子学先生(大学院専攻主任)が、ミニ講義は竹内いつ子先生(公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士のトリプルライセンス取得者!)が務めました。お聴きくださった高校生そして保護者のみなさんは、きっと、本学科の学びの奥深さと多様な進路を含むその魅力を存分に感じてくださったことと思います!!

 水子先生の学科紹介では、“まるでハリウッドが制作しているかのようなカッコいいスライド”(←ミニ講義担当竹内先生談)で、本学科での学びが専門職につながるだけでなく進路の選択肢を拡げてくれるものであることを、カリキュラム・取得できる資格・進路実績にもとづき説明されていました。「心理学の学びは役に立つ」というメッセージがみなさんに届いてくれることを期待します!

 竹内先生のミニ講義では,「自分会議」というテーマで,悩みの背景にある「こうあるべき自分」と「現実に体験する自分」の不一致を、カウンセリングでどのように一致に近づけていくかについてお話がありました。ご来場の方々は、興味深く聞いてくださっていました。臨床心理学科では、カウンセリングの実際について、さらに詳しく学べます。

 「大学体験型」イベントに参加されたみなさんも、たいへんお疲れさまでした。ぜひ秋の入試に生かしていただきたいです!

★「大学体験型」イベントの説明は、以下をご覧ください!
https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/experience/?TOP

 今回のオープンキャンパス&「大学体験型」イベントも,岡山県をはじめ,県外からもたくさんの方にお越しいただきました。いつもありがとうございます!
 高校生のみなさん、心理学・臨床心理学を学びたいと思ったら,ぜひ川崎医療福祉大学 臨床心理学科を訪ねてください。きっと、みなさんにとって“まだ、知らない世界”への明るい扉が開けます!

 次回のオープンキャンパスは 学園祭との併催による「キャンパスショーケース」で、10月18・19日(土・日)10:00~15:00の開催です(https://w.kawasaki-m.ac.jp/exam/opencampus/)。ご興味を持たれた方は、ぜひ足をお運びください。これまで同様、学生サポーターと教員スタッフがみなさんをお待ちしています。

教職員コラム 「心理学って役に立つんじゃ!~独り言は心の窓!?~」 岡野 維新

こんにちは。岡野です。
私は今,「独り言」の機能について研究をしています。

皆さんは普段,独り言を言いますか?
言うとしたら,どんな時ですか?

独り言って改めて考えてみると,一体何なんでしょうか…。

ロシアの心理学者・ヴィゴツキーさんによると,独り言は「自身の思考を補助することを目的とした発話」であるというのです(Vygotsky, 1962)。
 (※別名,「プライベート・スピーチ」!)

考え事をするとき,幼児さんはよく声に出しながら行っています。
小学生くらいになると声に出さなくとも,頭の中だけで行えるようになっていきます。

でも!
頭の中だけで処理しきれないような難題と対峙した時,何とか思考を整理しようと,あるいは何とか解決に至ろうとして,独り言(プライベート・スピーチ)がみられる場合があるようです。
それは子どもであっても,大人であっても関係なしだそうです。

数学の問題を解いているとき…。ゲームがなかなかクリアできないとき…。返事に困るラインが来たとき…。ロースカツにしようか,ヒレカツにしようか迷っているとき…。

そんな時,もし自分が独り言を言っていることに気づいたら,「あ,私,今,脳みそが即処理しきれないくらいの難題にぶち当たってるんだ」,「あ,私,この難題を乗り越えようと頑張ってるんだな」と思ってみてはいかがでしょう。

そんな時,あえて独り言のように思考を声に出してみてはどうでしょう。思考がまとまるかもしれません。

そんな時,もし身近な誰が独り言を言っているのを見かけたら,「あ,この人,今,脳みそが即処理しきれないくらいの難題にぶち当たってるんだ」,「あ,この人,この難題を乗り越えようと頑張ってるんだな」と思ってみてはいかがでしょう。

以上,独り言は心の窓かも,というお話でした。

(私はこの独り言の機能を活かして,気持ちのコントロールが苦手なお子さんの発達の手助けができたらと考えています。)

岡野 維新

【取材記事掲載】進藤先生の取材記事が公開されています(RSK山陽放送)

川崎医療福祉大学 医療福祉学部 臨床心理学科の学科長である,進藤 貴子 教授が取材を受けた以下の記事がオンラインで公開されています。

【タイトル & URL】
「日本人ファースト」→なぜ?日本人の心に響いたのか 社会で広がる様々な“〇〇ファースト“がメンタルに与える影響とは【心理学の専門家が解説】 | TBS NEWS DIG (4ページ) https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2070251

Yahooニュースにも掲載されていたため,以下のリンクも併記いたします。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6547019

昨今の国際情勢や先日の参院議員選挙での動向などを読み解く上でも欠かせない,心理学的な視点をぜひご覧くださいませ。