私のイチオシ心理学キーワードですが,それは「遊び」です。「遊び」というと,誰しもが経験したことがあると思います。私も幼い頃から,祖父母,両親,兄弟,近所や学校の友達と,それはそれはたくさんの人に遊んでもらい,毎日が遊び三昧だったように思います。
しかし,なぜ子どもは遊ぶのでしょう。子どもって,起きている間は,いつ見ても遊んでいるように思います(言い過ぎか…)。当たり前のように思えるかもしれませんが,義務でもないことに,なぜこれだけの子どもたちが夢中になるのでしょう。
私は大学に入学して,「遊戯療法」というものに出会いました。遊戯療法とは,「遊び」を用いた心理療法です。遊びが心理療法になる??・・・とてもユニークですよね。子どもは遊びの中で,心にひっかかっている出来事や消化しきれていない体験を再現し,その体験と向き合おうとします。我々大人が,言葉でそういった体験を整理するのと同じように,子どもは遊びの中でそれに取り組むのです。遊びの中で用いる玩具や物語の登場人物に,自分の様々な思いを仮託して表現するのです(伊藤,2017)。そう考えると,子どもの遊びというのは,とても尊いもので,守るべきもののように思われます。詳しいことは,後述する文献をご参照ください。
何はともあれ,心というのは,木を1本描くだけでも,そこにその人の心の世界が表れます。心が遊びや描画,箱庭といった言葉以外の形でも表現されると気づいたとき,臨床心理学の独創性と心に開かれた態度に惹かれてしまうのかもしれません。
文献
伊藤良子(2017). 遊戯療法――様々な領域の事例から学ぶ―― ミネルヴァ書房
大野木嗣子(2019). はじめてのプレイセラピー : 効果的な支援のための基礎と技法 誠信書房