私はリハビリテーション科の心理職として,交通事故や脳卒中などで脳に損傷を負った多くの患者さんに出会ってきました。
何年にもわたるリハビリの末,一生歩けないと言われていた患者さんが自力で歩けるようになったり,受傷直後は全くしゃべることができなかった患者さんが,言葉を取り戻していく姿を目の当たりにしてきました。そこまで劇的な回復ではなかったとしても,長いスパンで見ると,患者さんの様子は日々少しずつ変化していきます。
このような変化をもたらす原動力のひとつとして,「脳の可塑性(brain plasticity)」が重要な役割を果たしていると考えられています。「可塑性」とは,変形しやすい性質のことで,経験によって柔軟に変化する脳の性質のことを脳の可塑性といいます。リハビリを繰り返すことによって,傷ついたり死んでしまった脳内の神経細胞の周辺に,新たな神経細胞同士のネットワークが築かれ,そのネットワークが失われた機能を担うようになるのです。英語の習得や楽器演奏のように,練習を重ねることで今まで出来なかったことができるようになるのも,脳の可塑性のおかげなのです。
あなたの脳も柔軟性に富んでいます。さまざまな経験を重ねることで,あなたの脳は変化していき,思いもよらなかった力を発揮できるかもしれません。まだまだこれからです。

