教職員コラム お題「私の仕事」 武井 祐子

 あれは何歳のときだったか。最早期の記憶ではないが、3歳くらいの時のことだったと思う。その頃、毎日のように遊んでいた男の子の友だちがいた。お互いの家を行き来して遊び、家のまわりで遊び、本当に毎日のようにその男の子とは遊んでいたと思う。あるとき、その男の子のおうちで遊んでいると、新聞を読んでいたその子のお父さんが、「祐子ちゃんは大きくなったら何になりたいのかな」と尋ねてきた。私は、その尋ねられた意味がよく分からなかった。なぜそう思っていたのかよく分からないのだけど、その時は自分が将来なるものは神様か誰かが勝手に決めてくれるものだと思っていたからである。突然尋ねられて困ってしまい、私がうーんとなって、おそらくなんともいえない表情で考えこんでいたのだろう。友だちのお父さんは、「大きくなってなるものは自分で決めることができるんだよ。だからなりたいものにはなんにでもなれるんだ」と教えてくれた。なぜそう感じたのかよく分からないけれど、まさに天地がひっくり返るような、ものすごい衝撃を受けたことを覚えている。

 その時言われたことがしっかりこころに根付いていたからか分からないが、確かに自分の仕事は自分で決めてきたように思う。中学、高校、大学での出会いや出来事が今の私の仕事につながっているのは確か。その時、その時に考えて、自分で選び取ってきたように思う。

  でもここ最近、周囲から与えてもらって、私の仕事があるように思うようになった。先日、父とやりとりをしていたときに、なぜそういう流れになったのかよく分からないけれど、自分が選んだ仕事以外のことが最近すごく増えてきたというような話になった。そうすると父からこんな言葉をもらった。

 「本来の仕事からだんだん離れていくのは社会的に成長していく過程においてはしかたがないことです。そのことで視野が広くなり、人間のスケールが多くなります」。

 なるほどなあ。このあとの話は自分のやりたいことを極めるのか、そうじゃないのかということになっていくのだけれど・・・。自分が頑張れる仕事があるというのはとてもありがたいことなのかもしれないなと思うこのごろです。

武井 祐子