教職員コラム 心理学って役に立つんじゃ 〜 人はどうして交通違反を犯すのか? 〜 水子 学

 2026年4月1日から,自動車やバイクと同じように,16歳以上の自転車運転者による交通違反に対して反則金を納めるよう通告する「交通反則通告制度」(いわゆる青切符)が適用されます。「ながらスマホ」は,1万2000円,信号無視は6000円,傘さし・イヤホン使用は5000円など,100種類以上の行為が対象になります。普段,私は自転車で通勤していますが,夜,無灯火でスマホを操作しながら運転している自転車と衝突しそうになり,ヒヤッとしたことがあります。自分自身と周囲の人を守るために,交通規則をきちんと理解・遵守し,誰も傷つくことのないよう配慮ある運転を心掛けたいものですね。

 ところで,大なり小なりの危険が伴うにもかかわらず,人はどうして交通違反を犯すのでしょうか。自分勝手だから?モラルが低いから?まあ,それも理由のひとつかもしれませんね。でも,心理学の研究によって,その人のモラルの問題だけでなく,複数の心理的要因が組み合わさって,違反行為が発生することが明らかにされています。代表的な要因として,「自分は大丈夫」「自分には悪いことは起きない」という根拠のない妙な自信が挙げられます。心理学では,このように,自分が不幸な出来事に見舞われる可能性を過小に低く見積もり,反対に好ましい出来事が起こる可能性を過大評価する傾向のことを,楽観性バイアス(optimism bias)と呼んでいます。このバイアスがあるおかげで,私たちは「なんとかなる」と,前向きに生きていくことができるのですが,その一方で,信号無視や飲酒運転などの無謀な行為におよんでしまうのです。楽観性バイアスという心の働きは,私たちを守ってくれると同時に,危険にさらしてしまうという,相反する2つの役割を担っているのですね。心とは本当に不思議なものです。

水子 学