私のイチオシキーワードは,戸田正直先生が提唱した「アージ理論」です。
アージ理論では,「感情は,迅速な環境適応のために進化してきたもので,人の生存に有用である」ことが強調されています。例えば,アフリカ旅行中に,野生のライオンに突然遭遇したとします。「えっなんでライオンがいるの?」「どうすれば逃げられるかな」と考えを巡らせていたならば,その間にライオンに襲われてしまいます。一方で,ライオンの姿が見えた瞬間に強い恐怖を感じたならば,一目散に逃走行動を取ることができます。このように,「恐怖」という感情は適応的に働くことがあります。
臨床心理学を勉強していると,恐怖,不安,悲しみを緩和するような支援や治療に関心を持ちます。しかし,まずは患者さんが抱えている感情が持つ意味,環境の中で機能している適応的側面にも着目することで,支援や治療にも生かすことができます。
例えば,私は,テスト不安(俗に言うプレッシャー)を緩和する研究しています。しかし,「不安」は,「未来の脅威に対して準備や対処をするように促す」という適応的な役割がある感情です。そのため,不安を緩和しすぎると逆に勉強やスポーツのやる気が下がることもあるかもしれません。ただ,やはり不安が大きいと「自分の力が出しきれない」ということにもなります。
感情とうまく付き合いながら生きていくのは,なかなか難しいことですね。
そんなわけで,感情とうまく付き合う方法を誰でも学べるようなアニメを開発しました。
もしご関心がありましたら,ぜひこちらをご覧ください(宣伝)。
則武