教職員コラム 「私のイチオシ心理学キーワード:創造の病」 進藤 貴子

 天才と狂気は紙一重、と言われることがあります。著名な発見をした科学者や哲学者は、研究に没頭する中で強い孤独感や苦悩、時には精神病状態を体験しながら、ある時ブレイクスルーを迎えるのだそうです。アンリ・エレンベルガーというフランスの精神科医が、真理の発見に至るこのような病的な状態のことを「創造の病」と名づけました。

 沖縄の霊能力者であるユタの方々も、その能力が現れるまでの間には、たいへんな苦難や精神病状態を経ることがあるそうです。潜在的な優れた力が発現するには、相当な試練とある種の自我の崩壊を経なくてはならないのかもしれません。私たちも、病や不調、喪失など、非日常的な苦悩の体験の後に、何か創造的な気づきを得ることがあるように思います。

 エレンベルガーは、その病の間、本人は世界から隔絶させられたような強い孤立感があるものの、職業など日常的な現実とのつながりを保っている場合が多いとしています。

 

 「自身の研究に没頭する中、重要な人物との別離を契機に、フロイトは神経症、ユングは精神病状態に数年間苦しんだが、そこからの回復においてそれぞれの理論体系を構築した。このような、天才が真実を発見する途上で精神病状態に陥る例が他にもあることを紹介し、[①(人名)]は [②の病] と呼んだ。①と②に適切な語句を入れなさい」。

 
 皆さんにはもう正解がおわかりだと思いますが、過去には「[①アスペルガー]は[②不治の病]と呼んだ」と解答して、私をぎゃふんと言わせた人がいました。

 卒論を進めないといけないのに、パタっとやる気が途絶えて閉じこもっているこの2ヶ月も、高熱にうなされたコロナの数日間も、あなたの創造の病なのかも。

進藤 貴子