教職員コラム 「私のイチオシ心理学キーワード:安全基地」 岡野 維新

 今の私の関心ごとは子育てです。
 この難題に今まさに向き合っている。

 一体なにをどうしたらいいのか。
 今目の前にある確かな現実に対して,頭の中は上も下も分からない状態でどうにか1日を過ごしている。

 あちらを立てればこちらが立たず。どんどん視野は狭くなってくる。
 そんな時(余裕がある時限定!),心の中の参考文献を開くと,私の1ページ目にあるのは「安全基地」の考え方です。

 私は難しいことを考えるのが苦手です。なので物事をややシンプルに捉え直してしまう。

 今の子育ても考えれば考えるほど難しくなっていく。だから,「まずはこれを大事にしよう,これができていればまずはOKだ」というのを心に持っています。すると何かにつけて自分を許せる。

 「安全基地」。ボウルビィの愛着理論です。
私の理解はこうです。

 養育者は安全基地であればいい。
 子どもは自分で物事を方向付ける力を持っている。なので,子どもは私という安全基地から自分の興味・関心のある外の世界へ「探索」に出かけていく。だから私はそこに留まり,「いってらっしゃーい」と言って見送る。
 すると子どもは,何か見つけて来て,それを報告しに戻ってくる。そしたら私は「へー」と言って見る。
 あるいは,意気揚々と「探索」に出かけたが,コケて擦りむいたり,ジャイアンに嫌がらせをされて戻ってくる。そしたら私は「痛てかったなー」と言ってカットバン張る。

 すると子どもは元気になって,また「探索」に出かけていく…。

 これが私の基本パターンです。
 このサイクルが上手く回ると,子どもは外で色々学んで来て,何かあれば人を頼れて,かつ養育者もそんなにあっちに行ったりこっちに行ったりしなくていい,らしいです。

 理屈はそうでも実際はなかなか。
 でも真っ暗の海の中,闇雲に船を漕ぎ出すより,僅かでも灯台の光が射してあると気持ち的にちょっと楽。

 私はじっとする。基地として。
子どもが「探索」すれば,何を探索してるんだろうと想像する。
 子どもが戻ってくれば,迎え入れて安全を充電する。

 ホントはそれだけじゃいかんのだろうけど,それでいいよと言ってくれてる偉い人がいるのでちょっと活用させていただいてます。

 「安全基地」。これは私にしっくり来た理論でした。皆さんはどうですか。

 

数井みゆき・遠藤利彦(編)(2005):アタッチメント 生涯に渡る絆,ミネルヴァ書房.

岡野 維新