教職員コラム お題「私の研究テーマ」  佐々木 新

私の研究と言われて真っ先に思いつくのは,いわゆる強度行動障害の状態やそれに関連するアプローチ及びその周辺のことがらに関する実践研究です。強度行動障害とは何かについての詳細は授業等の機会に譲りますが,簡単に説明すると,比較的重い知的障害のある人が日常生活において表出する行動上の問題(自傷行為や他害行為,ほか)が,通常では考えられないほどの頻度や強度で出現し,家庭や施設等において相当の養育や支援の努力があっても対応しきれない状態となっていることを指しています。この状態のご本人や関係者はかなり辛い状況に追い込まれていることが多く,その生活を支えるための多面的なアプローチが必要となります。なので,これらの臨床や関連研究に関心を持っています。

20年程前のある日,社会人となって初めて配属された職場の上司,先輩方は何年もかけて強度行動障害の改善に向けて力を尽くしてこられていました。そのみなさんの実践研究から学ぶことが多くありました。施設の中だけではなく,関係医療機関の精神科医師,看護師のみなさん,厚生労働科学研究として実践事例の蓄積に取り組んでおられた研究会の先生方など,出会ったみなさんそれぞれが,強度行動障害の問題にかなりの熱量をもって取り組んでおられることを肌で感じました。これらの出会いから感化された面が多分にあります。

というわけで,私の研究は,「私の」と言いながらも,そもそも私の成分だけでできているのではないのだろうな,と思います。むしろ私以外のたくさんの人々の想いが大部分を占めているのかもしれません。その昔,「バファ〇ンの半分は優しさでできている」という市販薬のCMがありました。まさにそのような感じです。

 

佐々木 新