教職員コラム お題「学生時代の思い出」 山根 嵩史

 小中高等学校に加えて大学4年,大学院6年と,おそらく普通の人よりかなり長い期間,”学生”をしていたという自覚があります。その中でも,特によく思い出すのは,高校卒業から大学入学まで1年間通った予備校時代のことです。

 1度目の大学受験の年,何を血迷ったのか志望校1本で勝負した私は(今思い返しても本当に謎です),あえなく不合格となり,「努力は実る」をスローガンに掲げる某予備校に通うことになりました。入学手続きの日,飾りっ気のない予備校のビルを見上げて暗澹たる気持ちになったのを覚えています。

 予備校生としての生活そのものについては,ただ粛々と受験勉強をするだけでしたので,これといった思い出はありません。では何を思い出すのかというと,講師の先生方のことです。とにかく,どの先生も個性が強烈でした。カリスマ英語講師のS先生,めちゃくちゃ怖い古典のH先生,どう見ても堅気ではない文法のH先生,などなど…。そして,どの先生も授業が猛烈に分かりやすい。受験指導のプロフェッショナルですから,当然といえば当然なのですが。

 とりわけ私が感動したのが地理の授業でした。世界の気候や地形や産業について,ちゃんと理由があってそのようになっていることを筋道立てて説明され,社会科は暗記科目だと考えていた私の学習観を変えてくれました。この地理の先生は,お名前は忘れてしまいましたが,関西弁混じりの独特のトーンと,「それは無理があるやろ!」という無茶な語呂合わせの幾つかは今でも覚えています。そう考えると,あの強烈なキャラクターは,授業内容を記憶させるためのテクニックの1つだったのかもしれません。

 そんなわけで,私の予備校時代は,短い期間ながらも異彩を放つ思い出として残っています。奇しくも私自身が教員となった今,当時の先生たちの様子を思い出し笑いしながら,私自身は学生さんからどう見えているのだろう,と心配になったりしているのです。

山根 嵩史