教職員コラム お題「学生時代の思い出」 武井 祐子

 

 電車と市バスを使って京都のある私立高校に通っていました。今はそうでもないのだとは思いますが、私が高校生だった当時のその高校にはとても個性的な先生が多くて、楽しいというか、受験に必要な内容とはほど遠い内容をたくさん教えていただきました。当時は、高校でも勉強は教えてもらえるけど、受験に必要なテクニックや内容は、予備校や塾、家庭教師に教えてもらうのが当たり前といった雰囲気で、通っていた高校では受験に必要な勉強以外の内容がかなり盛り込まれていたように思います。姪が同じ高校に通っており、なんとなく今はそういう感じではなさそうなので、その時代にはそういうことが許されていたのかもしれません。

 2年生の時に担任をしてくださった国語の先生は本当にとても個性的な先生でした。その先生に教えてもらうと、模試のクラス平均が10点下がるという噂があるくらい、受験に関係がないだろうという内容が満載の授業をされる先生でした。その先生の授業では教科書が使われることはあまりなく、先生がお気に入りの文学作品が紹介され、授業時間を使って輪読するというような授業も何度もありました。その先生の定期試験の問題は、ある文学作品を読んで、その内容から推察される牛車の絵を描くという内容であったり、古文や漢文で恋文を書くというものであったり・・・。そこで学んだことが受験に直接いかされたとは思いませんが、高校時代には本当にたくさんの文学作品を読んだと思います。

 私は高校生までは英語が得意科目で、大学では英語に関することを学ぼうと思う時期もありました。しかし、英語の文章をぴったりとした日本語の文章にできないこと、しっくりくる日本語訳ができないことがよくありました。個性的な授業を展開してくれた国語の先生のおかげで、それが自分の日本語力のなさにあるということに気づくことができ、英語で食べていくことはあきらめ、大学では違う分野を学ぼうと考えるきっかけにもなりました。高校時代の体験が今にもつながっているのだなあとしみじみ感じています。

武井 祐子