教職員コラム お題「学生時代の思い出」 髙尾 堅司

 研究対象となるフィールドを求めていた大学院生の頃,他大学の先生の研究活動に加わる機会を得ました。驚異的な行動力のある先生に引っ張られるように,中山間地域にて研究を行うことになりました。その中山間地域では,地元住民以外の方が棚田のオーナーになり,地元住民の方と棚田での稲作をともにし,各種行事を通じて交流する棚田オーナー制度が実施されていました。最初は右も左も分からず戸惑ってばかりでした。しかし,美しい自然のもとで人々と交流することの意義に気付くのに,それほど時間は要しませんでした。

 その後,当該地域で質問紙調査を実施することになりました。確か,7月初旬だったと思いますが,炎天下での調査で調査は過酷を極めました。そんな私を見かねてか,地元住民の方がジュースを手渡して下さったり,麦茶を出して下さったりと,いろいろと気を遣って下さりました。本当にありがたい限りです。

 その他大学の先生からは,人々と交流する過程で研究課題を見つけ,それを自らの研究活動に組み入れていくことを学びました。そして,地元住民の方々との関わりを通じて,人としてのやさしさとは何かを考えるきっかけを得ることができました。2002年だったと記憶していますが,その成果をある学会誌に掲載することができました。単なる研究業績としてではなく,多くの方々に支えられた結果のように思え,大きな達成感を得ることができました。今もその達成感に変わりはありません。

髙尾 堅司