教職員コラム お題「学生時代の思い出」 進藤 貴子

 中学校の思い出。宿泊研修の夜、ゴキブリが出て皆がきゃーきゃー言っていたら、担任のK先生(生物の先生)がやってきて、「みんな! アブラムシは、アブラくないからムシしなさい」と笑わせて静めてくれました。いつもきまじめなK先生もネタあるんだ。しかも生物ネタだ。大人のたしなみだ。なぜか尊敬の念が湧きました。


 高校の思い出。地理のK先生は、週に1回だけ会う、穏やかな紳士でした。その日はクラス対抗球技大会の前で、授業中も私たちは興奮してひそひそがやがや。するとK先生は授業の手を止めて、どうか授業中は静かにしてほしい、というようなことを初めて注意され、「あなたたちにとっては、英語や数学はお肉やごはん! 地理はパセリ! パセリでしょう。ですけどね。私だって気持ちが穏やかではない」と続けられました。確かに英語や数学の時間に球技大会の話はしていなかったのかもなあと、私たちには耳が痛く、その後はシーンとして神妙に授業を受けたのは言うまでもありません。進学校の生徒たちに向かって、ご自分の担当する科目を「(あなたたちにとっては)パセリでしょう」と言ってのけた、こんな品格のある大人になりたいなあと思っていました。
 言っておきますが、私は、地理はパセリみたいなもの、とも思っていないし、そもそも、パセリがお皿の隅でしなびるだけの添え物とも思っていません。いや、思っていたのかなあ・・。ずっと後に高校の同級生に聞いてみたら、この時のことをやはり覚えていました。
 何十年経っても、こんな、ちょっとしたことを覚えているものですね。

進藤 貴子