教職員コラム お題「学生時代の思い出」 門田 昌子

 学生時代の一番の思い出は,月並みですが,恩師の先生に出会えたことです。

 先生は,ひそひそ話ができない声の大きな先生です。静かな空間で,小声で話しかけると,「えぇ?」と眉間に皺を寄せ,耳に手を当てて,大声で聞き返されます。また,とある場所で,知人ではない人も一緒に映画を見ていた時に,先生はバリバリと音を立ててかたい煎餅をお召し上がりになりました。ある時,3列の夜行バスで窓際の席だった先生は,かなりの早朝にカーテンを開けて外の光を感じておられ,運転手さんから「カーテンは閉めてください」と放送がありました(何回か!)。先生のことを思い描けば,本当に数々の思い出があふれ出てきます。笑いなしには語れないものばかりです。もちろん,研究においても,大切なことをたくさん教えていただきました。例えば,まずは正確な日本語を使うこと,研究にはストーリーが大事であること,論文の結果の記述で著者の主張が伝わるようにすること,可能な限り論文の質を高める努力を怠らないこと,などなど切りがないほどの教えがあります。しかし,研究指導を通して育てていただいたのは,研究に特化したスキルなどではなく,努力や物事への取組み方,自分自身の在り方だったと思います。研究を通して,研究以外の部分も成長させられるという感覚は,この先ずっと忘れたくないことの1つです。一方で,研究以外の時間で知り得た先生の考え方,感じ方が,研究への取組みに影響しているとも感じます。先生とのさまざまな形での交流が,今の自分の一部を形作っているのだなあと思います。ありがたいことに,今でも先生のご指導を受けることができています。これからの一部も先生との交流によって作っていきたいと思っています。

 

門田 昌子