教職員コラム お題「私の地元を紹介します」 水子 学

 学生時代を含めると,かれこれ30年間,この大学で過ごしている。昨年はちょっといろいろあって,1ヶ月ほどだけど,大学から離れた時期があった。

 

 久しぶりに出勤した時,心の中で「ただいま,戻ってきたよ。」という声が聞こえたんだよね。ほんとに。この大学には,たくさんの思い出が詰まっていて,私にとっては,まさに地元(本拠地)なんだなあって,改めて気づいた瞬間だった。
 といっても,“アオハル”な思い出は,ほんの少しで,講義中に,K先生の初孫が無事,生まれたという一報が入り,受講生全員で拍手した時のK先生の照れた表情,放課後に同じゼミの女子学生さんにお願いして,いろいろなジャンルの映画を観ている時の心拍と呼吸をポリグラフという大きな機械を使って測定したこと,学部3年の秋に,初めて学会参加のためH先生と一緒に東京に行き,都会ではよく見かける丸井のロゴ(O|O|←こんなの)を“おいおい”と読んで笑われたこと,研究生の頃,K先生から若者の投票行動に関する調査研究をやってみないかと誘われ,後輩と一緒に研究を行ったこと,大学院生の頃,指導教員のT先生から「車で事故を起こして帰ることができないから迎えに来てもらえないか」と連絡があり,慌てて現場に駆けつけた際,無人駅でポツンと待っている先生の背中が小さく見えたこと…そんな,どうでもいい記憶ばかりが蘇ってくる。
 でも,なんて言えばいいのかな…当時の臨床心理学科には,いろいろな考え方や価値観,失敗や挫折を全て呑み込むだけの懐の広さ,度量の大きさがあって,だからこそ受験勉強みたいに誰かが作った問題に答えるんじゃなくて,自分で解くべき問題を探すことの面白さに夢中になれたんじゃないかなって思うんだよね。誰も「それは間違っている」なんて言わずに,むしろ面白がってくれた。誰も正解を知らない世界,ちょっと怪しいけど魅力的じゃない?この雰囲気が私を育ててくれたような気がする。昔も今も,そして,この先もきっと。

水子 学