教職員コラム お題「私の仕事」 齊藤 由美

「私の仕事」というテーマを聞いて、すぐに頭に浮かんだ人がいます。

 その人との出会いは、私が学生の時でした。当時、精神障害のある方の作業所にボランティア兼研究として参加させてもらっていました。そこでAさんという利用者の方に研究に協力してもらっていました。Aさんは私の研究対象となってくださっていた間に、精神科病院への長年にわたる入院から退院されました。この出来事は私にとっても、とても大きな出来事で「良かった!」と心の底から思ったのを覚えています。また、Aさんとのかかわりも、私は順調だと思い込んでいました。ところがある日、Aさんから(私にとっては)思いもかけない言葉を言われました。それは「ここ(作業所)に来ているみんなの未来はお先真っ暗や」という言葉でした。そんなAさんの言葉に、私は何も答えることができませんでした。その日の帰り、悔しくて、自分が情けなくて涙が止まらなかったのを覚えています。何に対する悔しさだったのか、なぜ情けないと思ったのかは割愛しますが、この日のAさんの言葉がなかったら、私は精神保健福祉士という仕事を選ぶことができなかったでしょうし、このAさんの言葉は事あるごとに、背中を押してくれています。

 「私の仕事」は、Aさんのあの言葉に、「そんなことはないよ」としっかりと根拠のある説明ができるような状況をつくり、Aさんに「そうか、それなら良かったわ」と言ってもらえるようにすることです。それには、まだまだ努力が必要だと思う日々です。

齊藤 由美