教職員コラム お題「私の仕事」 岡野 維新

 私は大学3年生の時に発達臨床を現場で学びたいと一念発起しまして,ある施設にアルバイトに行かせていただく機会がありました。

 そこでの私の仕事は職員の手伝い,子どもの安全の見守り,そして「子どもと遊ぶこと」でした。

 

 そこには色んな子がいましたが,野球やサッカーなどはせず,ブロック一つで瞬時に完全オリジナルの設定を生み出し,最強のヒーローになったり,全てを焼き尽くすドラゴンなどになって遊んでいる子によく出会いました。まぁ楽しそうに。

 そういう楽しい遊びを色んな子が各所で同時にしているのですが,あまりの独創的な世界観のため大体の子が一人で遊んでいました。

 そんな中,当時の私の密やかな楽しみの1つが,そのような彼らの“想像の中で一緒に遊ぶこと”でした。

 私はある<すべての海の頂点に立つ深海の帝王>の側で,<空中をマッハで飛んで弱きを助ける大地の魔術師>に向かって,『大地の魔術師は大空をマッハで飛べるけど,さすがに海の中だと速度が落ちるのかな』と言います。すると魔術師は『いや,海の中でも1秒に地球を10周する速さで泳げる』と切り返します。

 すかさず私,『でもこの海にはあの伝説の深海の帝王が暮らしているらしい。帝王はこの海のことを何でも知っている』。魔術師は言う,『それはすげぇな』。

 すると帝王が動き出し魔術師に向かって言う,『この海には宝物が沈められている』。魔術師は『どこにあるの?』と興味を示し,そのまま最強の2人は深海パトロールの旅へ出ていきました。

 

 なんのこっちゃという話でしたが,そうやって彼らの豊かな想像力の中に飛び込んで遊んでいました。そして時には,私のような大人とではなく,同世代同士の中で楽しさが拡がっていくように繋いだりして遊んでいました。

岡野 維新