私の好きな映画~平成狸合戦ぽんぽこ~  瀧川真也

 ジブリ映画で何が好きかと聞かれ,『平成狸合戦ぽんぽこ』と答えると,本当に好きなのに,いつも冗談だと思われます。悔しいので,今回はこの作品の魅力を少し心理学的に考えてみたいと思います。

 この映画は,狸たちが化けて騒ぐコミカルな作品に見えますが,それだけではありません。物語では,宅地開発によって住処が失われていくなか,狸たちは人間に抵抗するため,忘れかけていた「化ける」力を取り戻そうとします。

 狸たちの「化ける」は,私たちの日常にも重なります。私たちは,学校,家庭,友人関係など,場面に応じて振る舞いを変え,時には本音を隠して周囲に合わせることがあります。こうした振る舞いは,社会で生きるための「適応」ともいえます。

 物語の狸たちも,それぞれの方法で新しい環境に適応していきます。人間に化けて暮らすものもいれば,狸の姿のまま,わずかに残された自然の中で生き続けるものもいます。どちらの生き方にも,「自分は何者として生きるのか」という「アイデンティティ」の問題が表れています。適応は生きるために必要ですが,適応するほど,本来の自分から遠ざかってしまうこともあるかもしれません。

 理想と現実の狭間で何を諦め,何を守るのか。どこまで自分を変え,何を自分らしさとして持ち続けるのか。『ぽんぽこ』は私たちの生き方についても考えさせてくれます。

瀧川 真也