教職員コラム お題「私の研究テーマ」 則武 良英

こんにちは。則武 良英です。

今回は,心理学の中でもとても身近なテーマの一つである「プレッシャー」に関するお話をします。

ほとんどの人は,今まで生きてきて”プレッシャー”を感じたことがあるのではないでしょうか?プレッシャーを感じやすい場面としては,学校の期末試験,高校や大学の入試,就職試験などがあるでしょう。

このような大事な場面では,「失敗したくない」「失敗したらどうしよう」と少しネガティブな思考が浮かんできます。

プレッシャーに関する近年の研究では,「頭の中でネガティブ思考が増えることで,脳の”思考”を司る部分が阻害される」ことが明らかになっています (則武他, 2020)。

つまり,試験の問題を解くことに不要なネガティブ思考 (例: 失敗したらどうしよう) が増えることで,試験の問題を解くために必要な思考が邪魔されてしまうのです。したがって「ネガティブ思考のせいで集中できなくなる」ということが科学的に明らかになっているということです。

でも,安心してください。
「試験前に”あること”をすると,プレッシャーの影響を受けにくい」ということも科学的に明らかになっています。

それはとてもシンプルな方法で,試験などの直前に「プレッシャーを感じている”今”の自分の思考を,白紙に文字として書き出していく」ことで,ネガティブ思考を緩和することができることが明らかになっています (則武他, 2020; 2022)。

これは,筆記療法 (短期筆記開示法) と呼ばれる心理療法です。思考を文字として表出することで,感情のコントロール能力が一時的に向上するために,このような効果があるといわれています。

 

詳細は,以下のYouTubeでも公開しています。ぜひご参照ください。

 

(1) 日本心理学会公式YouTubeチャンネル

 日本心理学会様からの依頼で作成した動画です。

 プレッシャーのメカニズムと実際の実験について解説しています。

 

(2) 則武  良英 公式YouTubeチャンネル

 私の個人チャンネルです。役に立つ心理学の知識を随時公開中です。

 

【参考文献】

則武良英・武井祐子・寺崎正治・門田昌子・竹内いつ子・湯澤正通 (2020). ハイプレッシャー状況が引き起こすワーキングメモリ課題成績低下に対する短期筆記開示の効果 教育心理学研究, 68, 134-146.

則武良英・湯澤正通 (2022). 中学生のテスト不安と数学成績に対する短期構造化筆記の効果 教育心理学研究 70, 290-302.

則武 良英