教職員コラム お題「学生時代の思い出」 中村有里

私が大学4年間を過ごした徳島は夏の阿波踊りの時期を除けば、とても穏やかなところで、愛媛で生まれ育った私が感じた文化の違いはと言えば、テレビをつけると流れてくる関西圏の番組と関西弁に似た阿波弁くらいで、とても居心地の良い場所でした。

 仲の良かった友人の一人がちょっと変わった人で、深夜のアルバイトが終わり、帰宅する際に私が一人暮らしをしていたアパートのベランダの前にやってきては小声で私の名前を呼び、寝てる私を起こすという困った人でした。小声にもかかわらず、私はその声で目をさましてしまい、「絶対に出てやらないぞ」と心に決めて、知らぬふりをしていると、翌日、決まって大学の通学途中に会い、その深夜のアルバイトで起きたことを色々話してくれたのでした。私はその話に関心を向けると、また夜中に名前を連呼されると思い、そっけないふりをしてやろうと思うのに、その話があまりに笑える話で、結局、興味津々で聞く羽目になっていました。

 そんな困った友人でしたが、私の不調にいち早く気づくのもこの人で、私が体調不良で大学を休んでいると、スーパーで買ってくれたお惣菜や果物をアパートのドアノブに(この時ばかりは静かに)かけてくれたり、電話に出た私の声が暗いと感じると、「今からそっちに行こうか?」と声をかけてくれる心優しい人でもありました。

 卒業後はお互い離れた県で生活をしていますが、年に1回ほど電話をくれたり、いつだったかは「来週、岡山に会いに行こうと思う」と、夕飯を食べるためだけに新幹線に乗って来てくれたこともありました。頻繁に連絡を取らなくてもつながり続けている感覚がもてるのも、青春時代を一緒に過ごした仲間だからこそなのかなと思います。

 

中村有里