
忘れもしない思い出が1つある。
高校時代,私は年の瀬に半ば強引に親友を誘い,釣りに行こうと計画を立てた。
私は釣りがしてみたかった。
お互いに釣り竿を1本持っていた。しかし,お互いに釣りついて全くの無知だった。
釣りと言えば早朝というイメージのもと,朝5時に駅のホームに集合した。
もしかしたら彼は来ないのではないかと思ったが,来てくれた。
彼は聞いた。「どこへ行くのか」と。
私は特に決めていなかった。「海沿いのどこか」とだけ答え,電車に乗った。
1時間半ほど電車にゆられ,私はエサを用意していないことに気がついた。
すると偶然,車窓から海と堤防と釣具屋が見えた。「ここで降りよう」。
まだ空が白む前の朝7時。第一投目で私の竿のリールが壊れた。
彼は私を呆れた顔で見ていた。しかし,第二投目で今度は彼の竿のリールに,釣り糸が悲しくなる程に絡まり動かなくなった。
彼は「リールが無くても釣りはできる」と言い,釣り糸を切断し,エサとおもりだけが付いた釣り糸を海へ放った。
しかし,何を思ったのか彼は両手を離した。おもりの付いた釣り糸はすぐ手前で沈んで消えた。
彼は叫び,私は笑った。空が白み始めた朝7時15分のことだった。
馬鹿らしくなって帰った。朝10時前には家に着いていた。

