教職員コラム お題「私の仕事」山根 嵩史

 子どもの頃から,「大きくなったら何になりたい?」という質問が苦手でした。自分の将来について,自分の信念や努力によって決定される部分よりも,周囲の環境や偶然によって決定される部分の方が多いのではないかという,良く言えば楽観的,悪く言えば無気力な考え方が強かったのだろうと思います。

 昔から動物は好きだったので,将来の目標について問われた時には「動物園の飼育員」や「獣医さん」などと短絡的に答えていましたが,これらの仕事に対して特別な思い入れがあったわけではなく,獣医学部に進むには学力が足りないよ,と高校の先生に言われたときに簡単に諦めてしまいました。  

 そんな感じなので,なぜ大学で心理学を学ぶことにしたのか,今となっては覚えていないのですが,ともかく地元の国公立大学に入れば親の迷惑にはなるまいという,後ろ向きな理由で大学を選び,後は自分の学力で選べる範囲内で,もっとも興味の持てそうな分野を選んだのだと思われます。いわゆる典型的なモラトリアム型でした(学生の皆さんは決して参考にしないでください)。

 大学教員を目指すようになったのは大学生の頃でしたが,はっきりとした転機があったわけではありません。ただ,大学で学ぶことはとても好きでした。面白いと感じた先生の授業は,単位を取り終わった後でも聴講しに行きましたし,専門書も沢山読みました。もちろん勉強ばかりしていたわけではなく,授業がない時には学生控え室に入り浸って,マンガを読んだり,同期や先輩後輩,先生と他愛もない話をしたりしていました。大学という環境は自分にとって居心地が良く,ずっとこの環境に居たいという思いが高まって,大学院への進学を決め,なんやかんやご縁があって教員になることができました。

  大学で学ぶうえで,就職や資格に必要な単位を取ることはもちろん大切ですが,純粋に面白い・知りたいという知的好奇心を刺激し,それを満たす方法を伝えることも,大学の重要な機能だと思っています。また,そのようにして真剣に学問に取り組んだ経験は,将来どんな仕事に就いたとしても,活かすことができると思います。私自身は,対人援助の専門家というわけではありませんが,こうして教員になった今,医療福祉のエキスパートを育成する本学において,学問することの面白さを少しでも学生さんに伝えることが,「私の仕事」なのかなと思います。

山根 嵩史