教職員コラム お題「私の宝物」保野 孝弘

 

 手帳1ページの走り書き William C. Dement

 私の宝物,研究室の机の上に置かれている。写真立ての中に入れられた1枚の紙切れ。

 そこには,「William C. Dement  Stanford University  In Osaka Mar 8, 1990

 この人は,REM睡眠(Rapid Eye Movement sleep )の発見にかかわり,REM睡眠と夢との関係を精力的に研究した人です。

 1990年3月8日(木),当時の手帳を開く。そこには,「国際シンポジウム ストレス社会と心の健康」とのメモ。当時,私は,関西学院大学院で研究員かつ教学補佐(今で言う助教)をしながら,睡眠研究を続けていた。少しずつ当時の映像が浮かんできた。場所は,大阪商工会議所。シンポジウムが始まる前,担当者の方に自分の所属と名前,睡眠研究を行っていることを伝え,Dement先生にお会いできないか頼み込んだ。数分後,何とDement先生が部屋から現れた。感動の一瞬。挨拶をかわし,お会いできた感動と感謝を伝え,私の研究を手短に話した。私は,思わず記念にサインを求めていた。先生は,ほほ笑みながら,サインをしてくださった。最後に,先生は「よい研究成果を」と,いやそう言われたどうかわからないが,私が勝手にそう理解している。

 果たして,私の研究成果は社会に貢献しているのか?1枚の紙切れに問いかける。

保野孝弘