教職員コラム お題「私の宝物」澤原光彦

 昨年2017年の6月初めに、臨床心理学科のスタッフからオープンキャンパス用に、私の自己紹介・プロフィールのようなものを書いて出すように依頼されました。

 その書面の様式には『高校生へのおすすめ!の本・映画』の欄があり、私は『君たちはどう生きるか:吉野源三郎著、岩波書店・岩波文庫/ポプラ社・ポプラポケット文庫』を筆頭に、『科学の方法:中谷宇吉郎著。岩波新書青版313』『科学の方法考え方・学び方:池内了著。岩波ジュニア新書272』『知の仕事術:池澤夏樹著。集英社インターナショナル新書001』『文章読本:丸谷才一著。中公文庫』『折々のうた:大岡信著。岩波新書(新赤版)113』といった書籍を列挙して提出しました。

 その時点では、古典的と言うよりいっそ反時代的な選択を行ったつもりで、「『君たちはどう生きるか』なんか、まぁ今どき誰も読んでないだろうから」という考えは、実は強くありました。まさか、そのわずか2ヶ月後の8月にこの書籍がマンガ化・出版され、僅かな期間で100万部を超える大ベストセラーになるとは、全く予想もしていなかったのは言うまでもありません。

 ここに挙げた写真右側部分、本の下になっているオレンジ色の縁取りの書籍名や新編日本少国民文庫6、新潮社版、などの文字が読み取れる四角い物が、この本の函なのです。そして、その函の上に斜めに置いてある淡い色調で中央に鳥が描れている表紙の本が肝心の書籍そのものです。(見てお分かりだとは思いますが)

 奥付けには「昭和31年6月20日発行、昭和42年7月30日12刷、定価350円」などと記載されています。

 この本を、私は小学校低学年から何回か読み返しました。

 左側のマンガ版は、株式会社マガジンハウス刊行のもので、2017年8月24日第1刷発行、同年11月10日第9刷発行となっています。

 毎日新聞2018年2月13日の記事では、マンガ版は170万部を突破し、新装版の小説と合わせると210万部発行されたとのことです。 

 実は私はもう一冊、1982年に発行された岩波文庫版もおそらく10年ばかり前に購入して所有しているのですが、陋屋のどこに埋もれているのか判らず、写真には載せられませんでした。この岩波文庫版には、丸山真男が著者・吉野源三郎の逝去に際し記した追悼の文章が文庫版の解説として収録されています。私が、昨年6月に高校生に推奨したときには、念頭にはこの岩波文庫版があったのです。

澤原光彦