教職員コラム お題「今、熱中していること」   水子 学

Q1.今,熱中していることは何ですか?

A1.今年の5月頃から始めた「糠(ぬか)漬け」作りですかね。若い方は,糠漬けと聞いてもピンとこないかもしれませんね。糠は玄米を精米するときに削り取られる胚芽部分です。この糠に,塩,水,昆布等を混ぜ込んで乳酸発酵させ,糠床(ぬかどこ)を作ります。あとは,糠床に,きゅうりや大根,人参など,好きな野菜を漬けると,糠漬けが完成します。

 下の写真は,今が旬の大根の糠漬けです。夏場は,我が家の庭で収穫したきゅうりを漬けて楽しみました。

 

Q2.糠漬け作りを始めたきっかけは何ですか?

A2.日本の発酵食品に興味をもったのが始まりですね。古本屋で,石川雅之氏の「もやしもん」という漫画に出会ったのがきっかけかもしれません。この漫画は,肉眼で菌を見ることができ,菌と会話もできるという特殊能力をもった主人公が,農大に入学し,研究室の仲間達や菌達と巻き起こす騒動を描いた青春コメディです。最近は,除菌や殺菌に関わる商品がたくさん出回っていますが,菌にもいろいろあって,上手につきあうことが大事なんですよね。

 本との出会いで言えば,宮本輝氏の小説「にぎやかな天地」もきっかけのひとつになりました。本を作ることを生業としている主人公は,日本の発酵食品の本を作るために,全国各地で糠漬,熟鮓,鰹節,醤油などを手がける職人たちを取材していきます。そのことを通して,菌の営みに魅了されつつ,その営みと人間の生き方とを重ね合わせていくというストーリーです。主人公と同じように,発酵食品を求めて全国各地を旅してみたくなりました。

 

Q3.最後に,糠漬け作りの魅力を教えてください。

A3.とにかく「難しい」ということでしょうか。夏場のように気温が高いと,乳酸発酵が過剰になり,糠漬けが酸っぱくなってしまいます。乳酸菌だけでなく,他の雑菌も繁殖するので,毎日,糠床の上下をひっくり返すように混ぜ込み,空気に触れさせる必要があります。それでも,糠床の表面にカビが発生したり,アルコールのような臭いが生じることもあります。また,糠床の置き場所を変えると,乳酸菌の活動の仕方が変化し,漬かり具合が違ってきます。人間のように,環境が変わると,その営みも変化するのでしょうね。乳酸菌の声に耳をすませながら,模索を続ける毎日です。