教職員コラム お題「今,熱中していること」進藤貴子

 

 備前焼のルーツは古墳時代の須恵器とか。その後平安時代にこの地に窯がつくられるようになり、以後1000年の歴史がある、日本の六古窯のひとつだそうです。頑丈で素朴で、遠赤外線まで発しているそうで、ビールが上手くなる、花器は花のもちが良いと言われます。

 備前焼への私の第一印象は「とっても素朴だなあ(つまり地味)」。年配の先生が素晴らしい備前焼のコーヒーカップや泡瓶(いわゆる急須)を持たれていましたが、「かなりシブい」「若い者(私のこと)には難しいなあ」などと思っていました。私もせっかく倉敷に来たのだからと備前焼のビアマグを購入したものの、きめ細かい泡は来客に勧めるぐらいで、酒屋さんでおまけに貰ったガラスコップのほうが普段の出番は多いぐらいでした。

 それからは備前焼にまったく関心がないまま結構な年月が経ち、その後、私は備前焼の魅力にとつぜんはまりました。倉敷の商店街を家族とぶらぶらしていて、写真の小さい一輪挿しを、ふと購入したその日からです。この一輪挿しは、庭で摘んできた草花を惹き立て、私に思いがけないやすらぎを与えてくれました。こういうひなびたものを自分が好きになるとは意外でした。大きい備前に憧れますが、購入するのはお小遣いの範囲なので小さいものばかりです。

 

 書道用の水滴ですが、お花を入れたりしています。

 

 生け花の素養もないゆえに、おかしなバランスになっているのでしょうが、私にはこのみずみずしさが可愛らしいです。備前焼は土の色です。いや、土そのものかもしれません。それで花と仲が良いのだろうと思います。

 

 目当ての備前焼のお店が夕方閉まっていたので、商店街の民芸品店に立ち寄ったところ、ぽってりとしたガラス器に出会いました。小さいですがずっしりとしています。庭でむしってきたアイビーが、新しい葉を出しています。こういうことに心なぐさめられます。年とともに好みもだいぶ変わるようです。

進藤貴子