教職員コラム お題「私の研究テーマ」 今里有紀子

 

 

今回のお題は「私の研究テーマ」・・・。私は、これまで病院や学校等で精神分析的心理療法や来談者中心療法等の内省を重視する立場の理論に依拠して臨床活動を実践してきました。その中でも特に、児童・思春期・青年期の問題、そしてパーソナリティ障害の方への支援を行うことが多く、それにまつわる事例研究を行ってきました。最近は、精神分析と愛着理論及び発達科学を統合した概念の「内省機能(reflective function)」に関心をもっており、その実証研究を行っています。例えば、まだ言葉をもたない赤ちゃんが夜泣きをしていて、養育者が「この泣き声のトーン,表情、手足のばたつかせ方、・・・」からすと、「暑いのかな?おむつが濡れたのかな?怖い夢でもみたのかな?お腹すいたのかな?」と子どもの精神状態を推測し、子どもにやさしく語りかける,この在り方が「内省機能=メンタライジング」なんです。つまり、「内省機能=メンタライジング」とは、「自分と他者の行動の背後にある心理状態を推測して、それと関連させて行動を理解する能力(「こころをこころとして扱うこと」)」のことです。赤ちゃんは、自分のこころをこころとして扱われることで、自身のこころを知り、養育者の表現を自身の中に取り込み、自分のこころの状態を理解するわけです。このような相互交流により、子どものこころは発達していき、自己を認識したり、感情のコントロール,自己肯定感や探究する能力を促進させることでき、子どもは情緒豊かになっていきます。このことは、心理療法の過程においても同様なのです。養育者の内省機能が高まれば、子どものメンタライジング能力も高まると言われています。そこで、養育者の内省機能を促進する子育てプログラムを開発したり、それから派生して、心理臨床家の内省機能を促進できる要素について研究を行ったりしています。もし、関心がありそうな方がいらっしゃれば、一緒に考えてみませんか?

今里有紀子