教職員コラム お題「私の宝物」白神 園子

 本学体育館の第2アリーナの壁の一部は広く鏡張りになっています。その鏡を貫くように長い手摺がついているのを多くの学生さんもご存じでしょう。単に邪魔な横棒と思っていませんか?

 かつて本学には、その手摺…レッスンバー…を使って日日練習を行っていた、クラシックバレエ部がありました。

 クラシックバレエ部は第1期生が立ち上げた部であり、初代副学長、上田智先生の奥様である宮崎裕美先生がご指導くださっていました。そして初代の顧問は、もう一人の初代副学長そして臨床心理学科初代学科長でいらした大羽蓁先生でいらっしゃいました。(ああ、上田先生も、宮崎先生も、大羽先生も、何と、芸術を愛する先生方でいらっしゃいましたこと!)

 わたくしは学生ではなく、川崎学園の職員の部活の一つであるクラシックバレエ部の一員として学生さんとともに練習をしておりました。

 宮崎先生は大変な情熱と大きな愛をもって、私たちをお導き、叱咤激励くださいました。そしてご指導のうち、大きな割合を人間修養に充ててくださいました。挨拶、行儀、ものごとの道理。ときには先生ご自身のバレエ教室の生徒さん達と練習することもありましたが、あるとき幼児ちゃんがお教室の端で乱暴な言葉を使っていたところ、「バレエはきれいなものをつくりあげるのだから、言葉もきれいなものをお使いなさい」とすかさず仰っていたのが印象深く残っています。

 先生の力強い牽引力のもと、1995年度から2001年度にかけて、私達は6回の公演を行うことができました。白鳥湖、ジゼル、ドン・キホーテ…、先生をはじめ多くの方々の多大なご協力のもと、学生の一部活では有り得ない、本格的な設えの舞台に立たせていただくことができました。

 踊りの稽古に加え、公演にむけての衣装作り、プログラム作成、広告掲載交渉、チケット販売等、医大や短大の学生さんも参加して、一緒に、連日、どれほど多くの時間を共有したことでしょう。学生部員さん達は、年齢も立場も違う私達職員部員に、分け隔てなく接してくれました。仲間といって憚らぬ、しっかりとした感覚が今も自分の中にあります(自身、技量低く皆の足を引っ張るばかりの部員でしたが)。

 写真の指輪は、活動中のどの年代だったでしょうか。当時のプリマドンナさんの伝手でクラブリング的に作っていただいたものです。トウシューズが象られているのがおわかりでしょうか。

 これを見ると、仲間の姿、皆で熱を入れて練習をしていた時間、舞台の袖での華やかな緊張とざわめき、そして我が部の父と母であった上田先生、宮崎先生ご夫妻を思い出します。

 遠い昔になったけれども、確かに在った、情熱を傾けた、愛おしい時間の証です。

白神園子