宝物は沢山あります。しかし,その宝物に出会うのは引越しのときのみなのです。
映画監督の堀井彩さんが以下の公式を提唱していました。
好き+使っている=重要な物
好き+使っていない=宝物
嫌い+使っている=道具
嫌い+使っていない=ゴミ
異論もあろうかと思いますが,私は今回のコラムのお題をもらって半月,宝物の写真を撮らねばと思いつつサッパリな状況でしたので,そうか,使っていない物だからズボラな私は宝物にたどり着けないのかと妙に合点がいきました。
そのような訳で宝物の紹介は難しいのですが1つ,最近宝物から重要なものに格付けが変更したものがありますのでご紹介します。
それがこちらです。
1回で約600mlのお茶を入れられるこの急須,大人数のお客様のお茶出し用だったのでしょうか,祖父母宅の茶箪笥に長年飾られていました。祖父母が他界し譲り受け,しばらくは思い出に浸る宝物として,そして宝物らしく,棚の奥にひっそり置かれていました。
しかしある日,すばらしいことに気づいたのです。
この急須で1回お茶を入れれば,3回飲める。
大発見です。なにしろ私は今まで,家で2,3回お茶を飲みたくなるものの,その度にお湯を沸かしたり急須にお湯を注いだり,熱いお茶が冷めるのを待つのは大変ハードルが高く感じられ,だったらもう水道水でいいや,という生活を送っていたわけですから。
発見により棚から出された急須は,毎日なみなみとお湯を注がれ,お茶を作るだけでなく冷めたお茶を保持するという急須にとって悲しい役割を担わされていますが,おかげで私のQOL(生活の質)は格段に上がりました。
緑茶を愛し,一杯を大切にし,最後の一滴を注ぎきるために急須を傾けていた祖父の姿を思うとバチ当たりな気もしますが,感謝しつつ,ズボラ茶を飲んでいます。