教職員コラム お題「私が学生時代に大切にしたこと」澤原光彦

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 さして聡明なわけでもなく、怠惰で意志薄弱であるがゆえ常に再試験や落第に怯えていた学生時代の私は、また同時に「自分のような者が果たして職業人としてやっていけるのか」という不安にも苛まれていました。

 そのように怏々(おうおう)として日々を過ごしていた折に、「厳しさを以て鳴る米軍の士官学校では、首席で卒業した者が華々しく称えられるのは当然として、その次に賞賛されるのはビリで卒業した士官候補生だ」という話を新聞の日曜版かなにかで読み、なんだかずいぶん励まされたように思います。

 首席は無論望むべくもないとして、ビリであっても脱落・落伍せずにおれば、なんとかなるかもしれない、と考えられたからです。再試験(実際に何回か受けました)の前などに思い出しては、付け焼刃の勉強にいそしんだものです。

(後註:調べてみたら、確かに米軍ではビリの卒業生を、海軍兵学校は「アンカーマン」、陸軍士官学校は「ゴート(山羊)」、空軍士官学校は「テールエンド・チャーリー」と呼んで、卒業生皆で賞賛祝福するのが伝統とされ、後にずいぶんと出世した人も少なくないとのことです)

澤原光彦