教職員コラム お題「私が学生時代に大切にしたこと」中村有里

DSC01823r 4年制大学を卒業後、本学に編入し、そして大学院を修了するまでの8年間、私は長い学生生活を送りました。大学院を修了する時、指導教員の先生からいただいたメッセージには「修了」ではなく、「終了おめでとう」と書かれていて、「そうなんだ、終わったんだ」と改めて感じたことを憶えています。

 私が学生時代に大切にしていたことは「今しか出来ないことをする」というものでした。最初のきっかけは初めての大学の夏休みに遡ります。当時、大学の夏休みは2か月近くあり、この長い休みをどんなふうに過ごそうかと私は考えました。「大学時代にしかできないことがあるはずだ」と思い、この2か月を海外で過ごしたいと思い立ちました。ただ、海外旅行の経験もなかった私が選んだ先はアメリカ、ロサンゼルス。心配する父から猛反対を受け一度は断念しましたが、こっそり手続きをし、アルバイトで懸命にその費用を貯めました。出発の数週間前に「今しか出来ないことだと思うから行かせてほしい」と父を説得し、それでもだめだと言われたらその時は諦めるつもりでした。渡航にかかわる全ての面で最大限安全な方法を選択することを条件に父は私の大冒険を許してくれました。「危険だから」という理由で、小学生の頃、夏になると地元の商店街で行われる夜市に友達と行くことすら許してくれなかった父なので、私が一人で2か月近くをロサンゼルスで過ごすというのは父にとって相当な覚悟が必要だっただろうなと思います。しかし、おかげでその当時、私が「今しかできない」と思っていたことが達成できたのでした。

 結局、私は大学1年生の時に初めてアメリカ滞在を経験し、大学3年生までの3回の夏をロサンゼルスで過ごしました。この3回の渡航のために私の大学生活はアルバイト三昧でした。最後の滞在となった大学3年生の夏、「また戻ってくるから」とホストファミリーに告げた言葉とは裏腹に「私はもうここには戻れない、戻らない」とも思っていました。翌年、大学4年生の夏にはその後の自分の進路を決めていなければならない、これまでのような過ごし方はできないんだと覚悟を決めていたことを憶えています。私の青春の1ページです。

中村有里