教職員コラム お題「私が学生時代に大切にしたこと」竹内いつ子

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 よくよく思い起こしてみると,私という人は,ふむふむとじっくり考えているようで,こころはあさってを向いているという実に散漫なところがあります。そのせいか気持ちの動き方も大きく,落ち着いて物事の筋道を理解し,取り組むには大変苦労してきました。

 そんな私の中学生の頃から続いていることといえば,日記を書くことです。その日を振り返って出来事を書くというよりは,自分の中でひっかかっていることや,面白かったこと,つまらなかったこと,反省や願望などを書いていました。書き方も気分次第で,口語文語会話調,横書き縦書きひと筆書き,記号や暗号(何を想定していたのか…),塗りつぶしやスクラッチ,図表や絵など様々でした(つくづく散漫さが表れています)。大学生の頃からは,ひと手間加えて,後でその日記の内容に自分でコメントをつける(“心身概ね良好な印象”とか,“ほとばしるdepression”とか),というのをやるようになりました。大学院に進学してからは,論文形式を意識してkeywordsをつけたり,問題からはじまり,結果とにわか考察を書いたりしました。こうして考えてみると随分ヒマな人のようです…しかしながら日記を通して,出来事の原因や可能性に合点がいくと気持ちがもち直し,活力が湧くことが多く,これらの作業は,私のこころの安定や人としての幾ばくかの成長に一役買っているような気がします。

 そこで,あえてよい見方をしてみると,一連の日記作業はつまり“自分というものを表出し思考する”行為とも言えなくもないかと思います。日記の効用はあちこちで言及されていますが,私のような心もちが散漫な傾向のある人には,まずは思いのままに文字などに書いて視覚的に表現し,気持ちを落ち着かせた後で,少し客観的に体験を吟味することが日々“概ね良好”に過ごすために,ある程度有効なのではないかと思う次第です。

竹内いつ子