教職員コラム お題「私が学生時代に大切にしたこと」 安藤正人

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 高校生までは,理系・文系程度の違いはありますが,だいたいみんな似たような人生を歩みます。ですから,大学生になって最初に思ったのは,やはり,「人生を賭けて,一体おまえは何をするつもりなのか」ということでした。

 実は,私は今年度で停年を迎えます。はじめに考えたことを実現できたのか,と詰問されているような気分になっています。私が大学に入学した年は,大学紛争がまっさかりの時代で,入学しても授業はありませんでした。大学の門には机や椅子でバリケードが築かれ,大学の中へ入るのもこわごわであったと記憶しています。昼間は下宿や図書館で勝手に勉強をし,夕方からは部室へ出かけて部活動に明け暮れる毎日でした。やるべき勉強の内容も分かりませんので,興味の向くまま,先輩に尋ねて名著を手に入れ,もっぱら自主学習あるのみです。おかげで,どんな内容でも自分で調べるやり方は,自然と身につきました。そうした学生生活を送りながら,いつも頭に描いていたのは,将来のあるべき自分のイメージです。どのような職業があるのか,どのような職場があるのか,細かなことは何もわかりませんので,ただ何となくこんな感じでいたいな,こんな老人になりたいな,というイメージを持ち続けていたということです。そして,そうなるために必要と思われたことを,ただひたすら頑張る毎日であったように思っています。で,なれたのでしょうか・・・「はい」とも「いいえ」とも,何とも答えに窮します。何にも実現できなかったな,というのも本当のことですし,でもやって来たよな,というのも本当のことです。ご存知の方も多いと思いますが,私は途中で理系から文系に移っています。しかし,将来のイメージは,それほど変わっていません。裸電球の下で,ステテコとランニングシャツ姿で,和机の前に座って,書物に埋もれながら頑張っている,という学者のイメージが,高校を卒業した時から大切にしてきたイメージなのです。仕事としての人生は今年度で終わりですが,まだ少しだけ先が残されています。できることなら,最後の一息を吐いてしまうまで,こんな感じでやって行きたいな,と考えています。

安藤正人