教職員コラム お題「私が学生時代に大切にしたこと」佐々木新

 

 私が学生時代に大切にしていたことのひとつは,本で読んだことや大学の先生方からいただいた印象的な言葉です。少しだけ挙げてみます。

 

 (1)Without haste, but without rest.

 (2)バッハの家系に生まれたからといって一人前の音楽家になるには人生の早い時期から人一倍の練習にはげまざるをえまい。よい師匠にもめぐりあわねばならぬ。周囲もまたそうするための配慮をする要がある。夭折してもならない。そのような過程の後に,はじめて十何歳かにおいて一人のバッハは天才の誉れを得る。分裂病(原文ママ)も,ネガとポジの違いはあっても,同じである。分裂病たるための負の努力,負の環境構成がいる。

(3)「就職したら●●さん(同学の先輩)と○○さん(同学の先輩)のところに挨拶しておきなさい。そうしたら何かあってもいろいろ助けてもらえるから。」

(4)「飲みに誘われたら断らないようにね。」

 

  少し説明します。(1)はゲーテの言葉だそうですが,私はとある参考書(中原道善著『基礎英文問題精講』旺文社)に書かれてあるのを見て知りました。急がずに,だが休まずに,という姿勢が何かを成し遂げるためには大切であると今も思っています。なかなか難しいですけれど。

 (2)は受験勉強の傍ら読んでいた中公新書の笠原嘉著『青年期 精神病理学から』によるもので,統合失調症やその治療の多元的な性質について比ゆ的に表現されたものでした。大学に入ってからは精神科病院などの実習先でこれらの思いを巡らせ,就職してからは,重い知的障害を持つ自閉症の人が示すシビアな行動障害(激しい自傷行為や強いこだわり等々)を目の当たりにしながら,通ずるところを感じていました。

 (3)と(4)はそれぞれ大学院生時代にお世話になった先生方からいただいた言葉です(※後者は飲酒の強要を断らないようにという意味ではありません。念のため)。社会で生きて行くためにはつながりを大切にすることが肝要であることを教えていただきました。十分実践できたわけでもないのですが,おかげさまで,不器用な私でもどうにか社会人生活を十数年送ることができており,素晴らしい上司,先輩,同輩,後輩に恵まれてきました。自分の至らなさは多々あるにしても,つながりによって生かされていると思う今日この頃なのです。

佐々木新