臨床工学技士という仕事
― 医療と工学をつなぐ、これからの専門職 ―
いま、臨床工学技士の役割が大きく変わっています
現代の医療現場では、人工呼吸器、人工心肺装置、血液透析装置、生体情報モニタ、手術支援ロボット、AIを活用した医療機器など、数多くの医療機器が患者さんの命を支えています。
これらの機器を安全かつ効果的に運用する専門職が、臨床工学技士です。臨床工学技士は、医学と工学の知識をもとに、生命維持管理装置の操作や医療機器の保守管理を担う国家資格であり、医師や看護師など多職種と連携しながら医療を支えています。
医療機器の高度化が進む現在、その専門性はますます重要になっています。

法改正により、業務範囲はさらに拡大
臨床工学技士を取り巻く環境は近年大きく変化しています。とくに重要なのが、2021年(令和3年)の臨床工学技士法改正です。医師の働き方改革やチーム医療の推進を背景に、臨床工学技士が担える業務は大きく広がりました。
新たに加わった業務には、たとえば次のようなものがあります。
- 手術室や集中治療室で使用される輸液ポンプ・シリンジポンプの操作
- 薬剤投与に関わる機器操作、および投与終了後の抜針・止血
- 心臓・血管カテーテル治療における医療機器操作
- 内視鏡手術でのカメラ保持や視野確保の補助
- 血液浄化療法における穿刺・接続・除去業務の拡大
臨床工学技士が実施可能となる業務 (日本臨床工学技士会 公式ホームページ)
これらは単に「できる仕事が増えた」というだけではありません。臨床工学技士がより患者さんの近くで、チーム医療の中核を担う専門職へと進化していることを意味しています。

透析だけではない、広がる活躍の場
「臨床工学技士」と聞くと、血液透析を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし現在では、活躍の場は大きく広がっています。
- 集中治療室(ICU) ―― 人工呼吸器、補助循環装置、持続的血液浄化装置などを担当
- 手術室 ―― 人工心肺装置や手術支援機器を管理
- 心臓カテーテル室 ―― 検査・治療を支える各種装置を操作
- 病院外の医療 ―― ペースメーカ、植込み型除細動器、在宅人工呼吸器、遠隔モニタリング機器など



つまり臨床工学技士は、医療機器を通して患者さんの命と生活を支える専門職です。この広がりは今後も続くと見込まれており、なかでも次の4つの領域が注目されています。
これから期待される新しい役割
ロボット支援手術・内視鏡手術
手術室では、内視鏡手術やロボット支援手術が急速に広がっています。映像機器、エネルギーデバイス、手術支援ロボット、生体情報モニタなど、多くの機器が同時に稼働するこれらの医療において、臨床工学技士は機器の安全な準備とトラブル対応を担う中心的な存在として、いっそう重要な役割を担っていきます。
体育館ほどの広さの手術室で、人工心肺装置や麻酔器、内視鏡モニタなど、いくつもの機器が同時に動く。その一台一台の状態を把握し、いざというときに数秒で判断を下す――臨床工学技士は、そうした緊張感のある現場に立ち会う専門職でもあります。
在宅医療と遠隔モニタリング
高齢化が進むなか、自宅で医療機器を使用する場面も増えています。在宅人工呼吸器、在宅酸素療法、腹膜透析、遠隔モニタリング機器など、患者さんの生活を支える医療機器は今後さらに広がります。臨床工学技士は、病院内だけでなく、在宅医療を安全に支える専門職としても期待されています。
AI・プログラム医療機器への対応
AIを活用して画像診断を支援したり、心電図や生体情報を解析したりする医療機器が登場しています。また、ソフトウェアそのものが医療機器として位置づけられる「プログラム医療機器」も増加中です。これからの臨床工学技士には、機器を操作する力に加え、データの意味を理解し、AIやソフトウェアの結果を安全に活用する力が求められます。
医療機器のサイバーセキュリティ
医療機器は、病院内ネットワークに接続されるものが増えています。便利になる一方で、通信障害や不正アクセス、ソフトウェアの不具合といった新しいリスクも生まれています。これからの臨床工学技士には、医療機器の安全管理に加えて、ネットワークや情報セキュリティの知識も欠かせません。
高校生のみなさんへ
― 「医療」と「工学」をつなぐ仕事 ―
臨床工学技士は、患者さんに直接関わる医療職であると同時に、医療機器やテクノロジーを扱う工学系専門職でもあります。
- 「医療に関心がある」
- 「人の命を支える仕事がしたい」
- 「機械やコンピュータ、ものづくりにも興味がある」
- 「チームで医療を支える仕事がしたい」
そのような人にとって、臨床工学技士は非常に相性のよい職業です。
どれほど医療機器が進歩しても、それを安全に活用し、患者さんに最適な医療として届けるためには専門知識を持った「人」の存在が欠かせません。臨床工学技士は、その中心で活躍できる専門職です。
保護者のみなさまへ
― 将来性のある医療専門職 ―
臨床工学技士は国家資格を基盤とする医療専門職です。医療機器の高度化、急性期医療の複雑化、在宅医療の拡大、医師の働き方改革といった社会的背景のもと、今後も社会的な必要性が高まると見込まれています。
その役割は従来の医療機器管理だけにとどまらず、手術室、集中治療室、カテーテル治療、ロボット支援手術、AI医療機器、在宅医療へと、活躍の場が着実に広がっています。医療に関心を持つお子さまにとって、臨床工学技士は「患者さんを支える医療職」としてのやりがいと、「医療技術を扱う専門職」としての将来性をあわせ持つ、有力な進路のひとつといえます。
本学で学ぶ意味
これからの臨床工学技士には、国家試験に合格するための知識だけでなく、医療現場で実際に活躍できる力が求められます。
本学科では、医学・工学・医療機器・安全管理・チーム医療を体系的に学び、医療現場で求められる実践力を養います。人工呼吸器、血液浄化装置、人工心肺装置などの基本的な生命維持管理装置に加え、手術室医療、集中治療、カテーテル治療、在宅医療、医療機器安全管理まで、幅広い分野を学べる教育体制を整えています。
臨床工学技士に求められる力は、これからますます高度になります。だからこそ、4年間かけて医学と工学の両面からじっくり学ぶことに、大きな意味があるのです。
医療機器の未来を担う人へ
医療は今後さらに高度化していきます。AI、ロボット、遠隔医療、在宅医療、ネットワーク化された医療機器――新しい技術が次々と医療現場に導入されていきます。
しかし、どれほど優れた機器であっても、それを安全に使いこなすのは人です。臨床工学技士は、医療機器の進化とともに成長できる職業です。
人を支える医療の心と、技術を使いこなす工学の力。その両方を身につけ、これからの医療をつくる専門職を、私たちとともに目指してみませんか。
