健康管理

健康管理

メビウス症候群は、生後間もなく呼吸障害を生じる重症例から、顔面神経麻痺と外転神経麻痺に限局される例まで、症状に幅があることを理解しておくことが重要である。全身管理と共に眼科・耳鼻咽喉科・整形外科・形成外科・歯科等の専門科へのコンサルテーションが必要である。チーム医療による包括的な健康管理を行い、家族支援を行う。

周産期

胎児期は所見に乏しく本症候群を疑うことが困難であり、羊水過多はあっても軽度で穿刺排液を要する例は少ない。Apgar scoreは半数で低く、早期介入による予後改善を図ることができる。早期診断のためには臨床遺伝診療科にコンサルテーションが必要である。

新生児期

生後間もなくから呼吸障害を生じる例では、人工呼吸器管理が必要となる。呼吸障害や誤嚥(気道感染や窒息)による死亡があり、脳幹機能不全による突然死もある。哺乳・嚥下障害には経鼻胃管を要することも多く、哺乳・吸引指導を開始する。閉眼障害による結膜炎、角膜炎の予防も大切である。

重症例では鑑別診断が重要となる。特に周産期脳障害との鑑別には中枢神経系画像診断が有用である。

乳児期

重症例では呼吸障害、哺乳・嚥下障害が継続し、死亡リスクも残る。呼吸障害には気管切開を要することもあるが、喉頭気管分離まで要することはまれである。哺乳・嚥下障害には胃瘻造設を要することもある。運動発達促進や協調運動障害に対して理学療法を開始する。内反尖足には、ギプス固定、修復手術を要することもある。滲出性中耳炎による難聴を評価する。

幼児期

舌がうまく動かせず、口を完全に閉じることができないため、固形物の摂食が困難なことがある。指やストローを口元にそえることで食物や唾液の口元からの漏れを補うことができる。開口障害は、歯磨きを困難にし、食形態の工夫を要する。稀に全身麻酔や蘇生の際に問題になる。齲歯になりやすく、定期的な歯科受診が必要である。療育への参加により社会性の獲得を促す。舌や口唇がうまく動かせないため、言語療法を開始する。

学齢期

表情に乏しいことから、理解と表現の乖離が大きく、知的レベルを正当に評価されなかったり、眼球運動障害のため不適切に凝視をしているように誤解されることもあるため、周囲への理解を求めることが重要である。心理的な支援も重要である。