受験生の皆さんへ

~入学前に知っていると知らないとでは大違い~

●スーパー診療放射線技師

 専門学校を卒業しても、診療放射線技師にはなることができます。それなのに、4年制大学でトータルで2倍の学費を払い、時間をかけて診療放射線技師の国家資格を取る意味を考えたことがありますか? 
文部科学省は、大卒は大学を卒業したのにふさわしい実践力(学士力)を身につけていなければいけないと指導しています。それでは、大卒の診療放射線技師の学士力とは、具体的にどのようなものでしょうか?
それは、未来の医療を切り拓く知識と実力を身に着けるために体系的に学問として放射線技術を学び、さまざまな状況において適正な判断と対応ができるスーパー診療放射線技師であると、本学では考えています。
最先端医療の最前線で活躍し、医療福祉に、社会に貢献したいと思い、そのための努力を惜しまない覚悟をもって、入学してください。

●ほかのメディカルスタッフの国家試験より難しい?

医療職のなかでも、診療放射線技師の国家試験合格率が低いことから、国家試験に合格することが容易ではないことがわかると思います。
単純計算ですが、1日に90分授業が4限あり、週5日、1年間で30週、それを4年間続けて、国家試験受験資格が得られます(卒業できます)。
90分×2400回=216000分(3600時間)の講義内容から、国家試験ではたった200問に絞って出題され、そのうち120問正解すれば合格できます。当然ですが、丸暗記だけで解答できる基礎問題だけでなく、難しい応用問題も出題されます。
3600時間分と言えば、1年生のときに習った内容も含まれます。考えてみてください。もし、皆さんが高校3年生だとしたら、中学3年生の時に習った内容(4年前の講義)をしっかりと覚えているでしょうか? 普通の記憶力であれば、なんとなくは覚えていても、詳細なことは覚えていないものです。しかし、国家試験では、4年前に習ったことも、忖度なく応用問題として出題されます。
3600時間分の講義内容を、1年生から3年生まで遊んで過ごし、4年になってから一気に覚え理解しようとしても、その量が膨大すぎて追いつきません。1年生からこつこつと覚え理解し、忘れかけたころに復習を繰り返して、4年生を迎えないと国家試験に受からないのが現実です。

●100%治る薬、60%しか効かない薬。あなたなら、どちらを選ぶ?

 前項を読んでも、200問中120問正解だったら楽勝で国家試験に合格できると思っている人もいるかもしれません。しかし、ここで視点を少し変えた話を書きます。
 200問中120問正解という現実は、80問不正解だということを意味します。もっと、分かりやすく言えば、10の知識のうち、4は間違った知識でも合格できるのです。本当に、そんな医療職が誕生してもいいのでしょうか? 診療放射線技師は、本来人体に有害である放射線を慎重に扱うことで、有益な情報を得たり、がんを治療したりする仕事です。放射線の量を誤ったり、有益な情報が得られなかったり、がんの治療が不完全である事態が、10回中4回も生じてもいいのでしょうか?あなたの大切な家族を、そんな診療放射線技師に撮影や治療をしてもらいたいですか?私は絶対に嫌ですし、断固拒否します。
 診療放射線技師にとっては1年に出会う何千人のうちの一人でしかない患者さんであっても、患者さんにとっては生命にかかわる重要な検査や治療です。たった1回の失敗もあってはいけない職業なのです。
 もし、あなたが診療放射線技師という仕事を将来の自分の職業とする気持ちがあるのなら、医療に携わる覚悟として、国家試験は200問中120問で合格できたとしても、120問ではなく200問正解を目指して1年生からしっかりと勉強しようと思ってほしいと考えます。

●国家試験勝者が知っている2つのこと

(1)GPAとはGrade Point Averageの略で「平均成績係数」を意味します。学生一人一人の総履修科目に対する成績の平均を数値で表すもので、個人の履修状況や成績を表す指標値です。 GPAの計算では、個人が履修した各科目の成績評価であるGP(Grade Point)を使います。過去の統計では、4年間で卒業し、安心して国家試験に合格するには、4年生になったときGPAが2.7以上であることが望ましいということがわかっています。
 GPAが2.7以上とは、履修した科目の成績が9割以上80点以上、残りの1割も70点以上であるという意味です。履修科目の成績が80点以上とは、その科目の内容を十分に理解していることを表し、試験直前の付け焼刃勉強で取れる成績ではありません。履修科目の成績が70点以上とは、その科目内容を十分に理解しているとは言えない状態です。つまり、4年生になったときにGPAが2.7以上とは、一部苦手意識のある科目が存在しても、ほとんどの科目を十分に理解はしている状態であるということになります。もし、4年生になったときにGPAが2.7に届いていない場合は、4年生のときに行われる実力試験、実力判定試験、卒業試験で、卒業基準に達する点数になかなか届かず、非常に苦労することになり、最悪の場合は留年となる可能性が高くなります。

(2) 記憶の深さには、3種類あると言われています。一番深く脳裏に刻まれ、なかなか忘れない記憶を長期記憶と言います。例をあげると、九九などが長期記憶になります。次に、覚えようとする行為などにより強く印象に残った記憶のことを短期記憶と言います。たしかに、強い印象は残っているのですが、そのまましばらく放置していると、すぐに忘れてしまうところが問題です。“先週、非常においしいラーメンを食べに行ったことは覚えているが、そのラーメンを食べに行った日付がすぐに思い出せない”という経験がありませんか? このような記憶が短期記憶です。短期記憶は、何度も繰り返し覚えなおし、刺激を与え続けることで長期記憶に変えていくことが可能です。最後の記憶が、一時記憶と呼ばれるもので、非常に短命な記憶です。その直後は覚えていて、しっかり覚えたつもりなのに、半日もたてば曖昧な記憶になってしまうものです。帰宅した直後は、スマホやカギを置いた場所を覚えているのに、なにか別の作業をしている間にどこに置いたかが分からなくなってしまう記憶のことです。

●国家試験必勝ガイド

 それでは、4年生になったときにGPAが2.7以上である(履修科目で80点以上の成績を取り続ける)ためには、どうしたらいいのでしょうか?


(1) 講義を受けた直後の記憶は一時記憶でしかなく、まず、その日のうちに復習をして短記憶にする必要があります。毎日復習をする癖をつけましょう。90分の授業が1日に4限もあるため、この復習だけでかなりの時間がかかります。


(2) この毎日の復習で、自分が理解できていない範囲を見つけ、講義でついていけなくなる前に、科目の担当教員に積極的に質問しに行きましょう。次回の講義では、前回の内容までは理解しているという前提で説明が進みます。疑問点を放置することは、絶対に避けてください。講義が分からないと、勉強の意欲が低下します。また、理解しなければいけないことは、暗記で逃げようとせず、必ず理解することを心がけてください。暗記だけでは、応用問題に対応できません。


(3) 次に、短期記憶も放置すれば、いずれ忘れてしまいます。1か月おきくらいに、過去の講義の復習をくりかえし、短期記憶を徐々に長期記憶に変えていく努力も必要です。この復習の回数が多いほど、定期試験の成績が上がっていきます。日ごろから、『短期記憶を長期記憶に変え、疑問点もないようにし、暗記だけでなく理解する姿勢』であれば、試験前の不安は解消されます。


(4) 定期試験(学期末試験)を終え次の学期になれば、新しい科目の講義が始まります。自分では、長期記憶にしたつもりの過去の学期の科目内容も、徐々に記憶が薄れていきます。そして、この記憶が徐々にうすれた状態で、4年生になってしまうと、国家試験勉強で苦労します。そこで、自分では長期記憶にしたと思っている科目の内容も、夏季休暇、冬季休暇、春季休暇にかならず復習を行ってください。

 


以上が、基本的な学生生活(勉強法)です。ここまで勉強して、まだ余裕があるのであれば、アルバイトやクラブ活動も可能です。

●要注意! 勉強に失敗する6パターン

毎日復習、1か月おきの過去講義の復習をしているのに、なぜか成績が伸びない人は、以下のいずれかに必ず原因があります。


(1) 覚えていないのに、ただノートを見返しただけで復習をしたと思い込んでいる。すべて覚えなおして、初めて復習と呼べます。


(2) 覚えなければいけない事を、診療現場の経験もなく、国家試験を受験したこともないのに、自分勝手に「これは重要」「これはさほど重要ではない」と決めつけている。つまり、内容を省略した手抜き勉強をしている。


(3) 理解することを避け、暗記でなんとか対応しようとしている。


(4) 分からないにもかかわらず、質問などは行わず、放置した結果、すでに授業についていけなくなり、意欲が低下している。


(5) 本当は余裕もないのに、アルバイト、クラブ活動、ゲーム、睡眠など勉強以外のことに時間を割いて、勉強時間が圧倒的に足りない。


(6) 正常性バイアスと呼ばれる状態になっている。非常に危険な状態であるのに、根拠もない自信から「自分だけは大丈夫。なんとかなる。」と思い込んでいる。つまり、慎重さが足りないうえに、努力を避けている。


●最後に

以上の情報を知ったことで、受験時の意欲をさらに高めてほしいと思います。そして、入学後もその意欲・目的意識を維持しながら、大学生活も Enjoy! してください。その結果として、“スーパー放射線技師への道”を確実なものにしましょう。診療放射線技術学科教員一同、皆さんの“やりがいのある人生”に期待し、応援しています。